-第11-ドタバタ
その子の外見はエルフのような耳に金髪の髪
肌は白く、眼は薄い青色、背は子供のように低い
そんな子が毛布を包まり怯えた表情で
リナリアの顔をもう一度見ると小さな声で言う
「……だれ……この『おばさん』」
その瞬間、屋根がない部屋なのにまるでブリザードが降ったような感覚に
ロイは襲われ……横眼でリナリアの顔を見ると
それはそれは……満面の笑みで目の前の子供を見ている
「……ねぇ、あなたはなんなの?」
リナリアは笑顔のまま歩みよると子供の頭を掴み言う
その行動に子供は怯えて泣きそうな顔でロイの顔を見る
するとロイは溜息を一度付くと……リナリアに言う
「その子から手を離してやれ」
「はーい」
リナリアはロイの言葉に従い手を離すとリナリアの肩に乗ったまま
今まで無言だったイミィが小さな声でロイに言う
「この子から……魔力を感じる……」
「ああ、知ってる、こいつがヘイムが言ってた逃げ出した子か」
ロイがベットの上にいる子を見ると、その子は少しだけロイに微笑む
それを知ったロイは椅子から立ち上がり、その子の隣に座る
そして右手をその子の頭の上に置くと、優しく話かける
「……俺の名前はロイ、君の名前は?」
「ミミリア・アスリィ」
「そうか、ミミリアはどこから来たんだ?」
「魔王城……」
その言葉にロイの眉間が少しだけ反応する
しかし……それに気づいたのはリナリアだけである
それを見て見ぬ振りをするためなのかリナリアは両目を瞑る
「ほぅ、魔王城からどうしてこんなところに?」
「……」
「言いたくなかったらいいさ」
そう言ってロイは立ち上がろうとするとミミリアは慌てて
ロイの後ろの服を両手で掴む、その動作に後ろを見ながらロイは話かける
「どうした?」
「……私は魔王城から逃げて来た」
「ああ、それで?」
「…………私はエルフ、魔王の捕まって魔力を毎日
上位の悪魔に渡すお仕事をしてたの……でもそれが嫌になって」
「上位の悪魔に……?」
「魔王軍の兵士を強化して勇者を殺すって……」
「なるほど、自分の手を汚さず、部下にやらせるのか」
「それも、こんな小さい子を使って……」
リナリアが可愛そうな目でミミリアを見た時
ミミリアはリナリアを睨むと言う
「多分だけど、そこのおばさんと同じぐらい」
「じゃあ私はおばさんじゃないでしょ?!」
リナリアがミミリアの眼を前まで行くと睨みながら言う
それを呆れた表情で見たロイはリナリアに言う
「……リナリア、エルフを見た目で判断するな」
「そうそう、ロイはわかってるみたいだからいいけど」
「……なんでロイ様に馴れ馴れしいのよ」
「一目ぼれ?」
「……は?」
ミミリアの言葉と同時にリナリアの右手に黒い魔力が凝縮していく
それに気づいたロイが慌ててリナリアに言う
「リ、リナリア……落ち着け、冷静で可愛いお姉さんなんだから」
「え?! ロイ様、今なんて?!」
リナリアはロイの顔に顔を寄せると満面の笑みで言う
その動作に少し顔を離したロイがリナリアに言う
「だから、可愛いお姉さんながら落ち着け」
「はいっ」
『あぶねぇ……もしもあのままだったら俺事、ここが吹き飛んだ……』
ロイは右手を胸に当て一息ついた時、ミミリアがロイに言う
「ねぇ、ロイ……ロイはどうしてここに?」
「……また職に就くためさ」
「職? ってことは今無職なの?!」
その言葉がロイに精神的な槍となって突き刺さったように
ロイはミミリアから顔を背ける
しかし、ミミリアはそんなロイに話かける
「だ、大丈夫! 私が面倒みてあげる!」
「……お前も無職だろうが」
「ぅ……で、でも……エルフの村に帰れば……!」
「俺は『元魔王』だ、人間界のエルフの村なんていけるか」
「え……」
その言葉にミミリアは少し後ろに下がる
しかし、直ぐにロイに近寄り……笑顔で言う
「大丈夫! エルフも人間嫌いだから!」
「エルフは人間に友好的と聴いたのだけど?
勇者に協力したエルフもいるって話」
ミミリアの言葉にリナリアがやや大きな声でロイとミミリアに言うと
ミミリアは小さな声で『黙れ』と言った後、ロイに話かける
「で、でも……魔界に人に友好なエルフがいてもいいでしょ?」
「……さぁな、ちなみに俺は弱い奴が嫌いだ」
『……こう言ってやれば諦めが付くだろうよ』
ロイは目の前のミミリアを見て思った
もしもミミリアがロイ達に付いてきて、エルフ達が人間の敵になることがあれば
それは全てミミリアが悪い事になる、だからこそロイは合えてきつい言葉を
ミミリアにぶつけ納得させようとしたのだ
「私強いよ?」
「……馬鹿も休み休み言いなさい」
「馬鹿じゃないわよ、ばばあ、私はこれでもエルフの中で強いんだから」
「そ……そう、じゃあ……私と少し遊ばない?」
「上等! もしもおばさんに勝ったら付いていくから」
「ええ! 望む所よ! 外にでなさい!」
リナリアの言葉と同時に2人は部屋から外に出る
その2人の会話と動きに呆気にとられたロイは1人
ベットの上に寝っ転がると独り言を言う
「ふぅ……後は勝手にやって……」
そしてロイはベットの上に横になり目を瞑ろうとした時
目の前で一緒にベットで横になりながらリーナが笑顔で右手を振っている
それに気づきロイは慌てて飛び起き言う
「お、お前……何時の間に……」
「え? あの2人が外にでた時?」
「ってことは今の今まで外に?」
「いや? 普通に1階で店の人と話をしてたわよ
あの2人……リナリアも私に気付かなかったし
だから私は……ロイ君の部屋を覗いたらロイ君が横になるから一緒に」
「……」
「何その呆れた顔……婚約者ながら別によくない?」
「……いや、お前どこに飛んだんだよ」
「え? ああ、あの後、近場に降りてその足で宿屋まで戻って
1階で話し込んでたのよ」
「……はぁ、じゃあ丁度いい、あの2人止めてくれ」
「……別にいいわよ」
「いいのか?」
「ええ、ただしロイ君が私と結婚してくれるなら」
「遠慮する」
「じゃあいーや」
「……はぁ、ところでお前はミミリアの正体に気付いてたのか?」
「うん、魔王城で見た事あるし」
「……なるほど、お前もミミリアを探しに来たのか」
「最初はそうだったんだけど、ロイ君を見つけたらどうでもよくなった」
「いいのかそれで……」
「べつにー、私は自由気ままの方が好きだもん」
「それなら俺と一緒に来るか?」
「んー、タダで付いてくの?」
「……何か欲しいのか?」
「じゃあ……何か特別な物くれたら現魔王なんて裏切って
ロイ君の使い魔? じゃなくて仲間になってあげる」
リーナは笑顔でそう言うとベットの上に座り足を組む
それに溜息付くとロイはテーブルの上に置いたままの本を手に取る




