-第10-リナリアの根源
「えっと……先程のはエクスプロージョンではなく
ハーモニック・フル・エクスプロージョンと言う魔法ですね」
「ハーモニック・フル・エクスプロージョン?」
リーナが首を傾げリナリアに聴き返すとリナリアはそれを無視し
ロイの顔を見ながら喋り続ける
「普通のエクスプロージョンは発動した場所に爆破を行う物なんですが
私のは相手の内部から爆破を起こす物で……」
「内部……か、でも……そんな魔法を敵が易々とかかるとは思えないが」
「なので、その辺を改良しまして……最初に目標にした1人に当たった場合
その周辺にいる『自分が敵』と認識した相手に連鎖するんです」
「ようは……次次に爆破していくって事……か」
「そうなりますね」
「ちょ、ちょっと待って! リナリア……いくらあなたでも
そんな莫大な魔力……そのペットいてもできないでしょ」
リーナがベットから立ち上がり、両手をテーブルの上に付くと
リナリアの顔を見ながら叫ぶ
するとリナリアは自分のポケットを漁り、空っぽの瓶3つをテーブルの上に転がす
その瓶を掴み『何これ?』と言っているリーナを他所にロイはそれに気づく
「……触媒か」
「はい、そうです……と言っても一時的に自分自身の魔力を2倍にする物です」
「……その反動は?」
「反動は……ありませんと言えば嘘になります
使ってから少しした後、魔法がしばらく使えなくなります」
「と言うことは……そこのリーナとあのまま戦っていたら……」
「はいっ、物理戦になって私の負けになります」
リナリアは満面の笑みでロイに言う
その発言聴いていたリーナは体をわなわなと震わせた後
空っぽの瓶を1つをリナリアに投げつける
するとリナリアの目の前で瓶は砕け、自分の残骸だけが散らばって落ちる
「何するの……?」
「……リナリア……今度は絶対負けないから」
「……ええ、幾らでもどうぞ」
「でも……1つだけ教えてほしい事があるの
それを聴いたらここからいなくなってあげる」
「なんですか?」
「……あんたのその膨大な魔力の根源はどこからきてるの?
あきらかに魔王以上……の魔力をあなたは宿してるのよ」
「……」
リーナの言葉にリナリアは目を細め、壁に寄り掛かると
ロイの顔を見る、すると理解しているのかロイは両目を瞑る
それを確認したリナリアは両腕をお腹辺りで組み喋る
「……この魔力はロイ様の物よ」
「は?」
「……ロイ様の現魔王時代、勇者に敗北する寸前に私に魔力を全てくれたのよ」
「……それは理解できるけど、その魔力を維持できる体じゃないでしょ……」
「……できるわよ、まぁ……『呪術』に近い事はしてるけど」
「何それ」
「……ロイ様は知ってると思いますが、ロイ様が次に滅びた時
私の体も塵となって消える、その変わりにロイ様の魔力を使えるの」
「主従契約みたいな物?」
「違うわよ……私はロイ様と契約してるわけではないから」
「じゃあどうやって……」
リナリアは両手をテーブルから離し、腕を組むと悩み始める
すると今まで黙っていたロイが口を開く
「ようは……リナリア自身が自分に呪いをかけてるんだ
体のどこかを探せば魔法陣があるんだろうが……」
「それってまさか……」
「いや、自分自身に影響はないだろ……さっき言ったように
俺が滅びるような事があれば……一緒に散るだけだろうし」
「じゃあどうして今ここにいるのよ……
ロイ君だって一度勇者に負けたんじゃ……」
「ああ、負けた……だからこそ魔王の職から無職になった
生きている理由は瀕死の俺をリナリアが看病してくれた」
「で、でも……勇者の攻撃にリナリアが耐えられる……わけ……」
そこでリーナは気付き、まるで呆れた顔でリナリアの顔を見ると言う
「なるほど……リナリアは自分の命を……ロイ君にあげたのね」
「……ええ、だからロイ様が滅びる時は私も滅びるわ」
リーナが気付いた事それは『呪術』の中に1つ禁忌とされた魔法がある
それを知っている物は魔界においても知ってる物の数は少ない
その魔法こそ『死者転生』、ただしリナリアが行ったのは『死者』を蘇らせる
ではなく……死にそうになったロイに自分自身の命を埋め込む
それはロイの体の中でリナリアの心臓とロイの心臓があるに等しい
だからこそリナリアはロイの元の魔力使える
「……でも、ロイ君に魔力はないのよね?」
「ああ、ないな」
「じゃあロイ君の魔力がないのにどうやって……」
「それは乙女の秘密」
「何が乙女よ……」
『実際は魔王城の隠し部屋、それもロイ様しか開けられないようしてる場所
そこに元魔王の力を溜め込んだ物を置いてある、それを使ってるのよ……
ただ……その力を使うにはロイ様自身の魔力根源が必要……
だから、今私自身の心臓がロイ様の中に合って初めて使えるの……』
「まぁ、いいわ……この後『ろくでもない事』に巻き込まれたくないから
私はこの辺で消えるわ、ロイ君……またね」
「ああ、またな」
リーナは飛び上がり、空中で一度静止すると小さな声でリナリアに言う
「……またね、リナリア」
その声はリナリアに届かず、リーナの独り言にも聴こえる
それを知ってかリーナは何事もなかったようにどこかへ飛んでいく
「……さて、面倒な人がいなくなった事ですし……
そこで寝たふりをしてる子とお話しましょうか」
リナリアはベットで今も寝ている子の方を見るとそう言う
するとびくっと体を震わせながら起き上がり……
毛布を包まりながら、怯えた表情でリナリアとロイの顔を見る




