4.コミュ障で友達0で腐女子の私に彼氏ができました
朝。昨日は全然眠れなかった。
ふわぁ、と、大きな欠伸をする
下駄箱で上履きに履き替えていると、声をかけられた
「…あっ!…羽島、おはよ!」
「えっ?!あ、おはようございますっ…!」
私に声をかけたのは五十嵐くんだった
普通に話しかけてきたけど、昨日のこと、気にしてないのかな…
神様。どうして私は五十嵐くんと一緒に歩いて教室に向かっているのでしょうか。
あぁ!ほら!女子がこっち見てる!めっちゃ見てる!睨んでる人もいる!
「今日の弁当は…弁当?うわぁぁぁ!忘れた!」
「え?」
そーいえば、今日、お兄ちゃんがお昼いないの忘れてて多く作っちゃったんだっけ…
「あ、あの、お弁当、多く作ってきちゃったんですけど…よかったら、食べますか…?」
私の隣でしょぼくれていた五十嵐くんの顔がキラキラと輝き始めた
「マジか!さんきゅー!この恩は一生忘れない!」
「は、はい」
そしてお昼の時間。五十嵐くんはチャイムと同時に私の席まできた
「宗介!今日は一緒に昼飯食わねーのかよ」
「弁当忘れたから今日はやめとくー」
…周りの女子からの視線が痛い!痛いよ!
「じゃ、いっただっきまーっす!…ん!」
「あ、おいしくないですか…?」
「すっげーうめぇ!羽島って料理上手いんだな!」
「あ、ありがとうございます」
五十嵐くんと話しているうちに、私はすっかり女子の視線を忘れていた
放課後、教室で帰る準備をしていると、数人…いや、数十人の女子に話しかけられた
「ねぇ、羽島さん」
「えっ…あ、は、はい…」
怖ッ!怖いです!神様仏様助けてくださいいいいいいい!
「ちょっといいかな」
「えっ、あ、は、はい」
私は女子軍団に連れられて屋上に来た。正確には来させられた
女子軍団のリーダーっぽい子が口を開いた
「羽島さんってさぁ…」
これ、あれだよね。「◯◯君とどういう関係なの?」てきなやつだよね。
「五十嵐君と付き合ってんのぉ?」
やっぱりいいぃぃいぃぃいぃぃ!
いやいやいや、滅相もございません!あんなイケメンとこんなブサイクが付き合ってるわけないじゃないですかー
「あ、その、えっと…い、ぃぇ…」
「え?なにぃ?聞こえないんだけどぉ〜」
「つ、付き合ってません…!」
私はそう言うと、少しだけ沈黙があったあと女子軍団が喋りはじめた
「なぁんだぁ!そーだったんだぁ!まぁ、そーだよねぇ。五十嵐くんには彼女ちゃんといるしぃ」
「えっ」
今の一言で、どうしてかわからないけど心が痛くなった気がした
「知らないのぉ?ほら、1組の杏奈ちゃんだよぉ」
九条杏奈ちゃん…。よく知らないけど男子からも女子からも人気あって可愛い子だよね。まぁ、二次元のショタとか男の娘のほうが何倍も可愛いと思うけどね。
「まぁ、それはおいといてぇ、誤解しちゃってごめんね?それで、私たちと約束してほしいんだぁ」
「や…約束…?」
「うん。もう、五十嵐くんと仲良くしないって。ほらぁ、また誤解しちゃうかもしれないから、ね?」
まぁ、もちろん私が断れるわけもなく、約束をしてしまいましたとさ
このあと私は解放されて教室に戻り、カバンを持って家に帰った
私は自分の部屋に入るとベッドにダイブした
…五十嵐くん、彼女いたんだなぁ。そりゃそーだよね。じゃあ、なんで…私なんかに話しかけたんだろ。
あれかなー…男子が地味な子に絡んで反応を見て楽しんでるやつかな。よくあるよね…私も、そう、なのかな…
『電話だよ?もしかして…男から?僕がいるのに?』という着信音で私は現実に戻ってきた
(これはヤンデレ乙ゲーのキャラの着信音でゲームの初回限定版を買った人だけに配信されるもので予約するのにすっごく大変でry)
「…だれからだろ……!?い、五十嵐くん…?」
前に一緒に帰ったときにメアドとか電話番号教えたんだっけ。
私は少し躊躇ったけれど着信音がずっと鳴っていたから電話に出た
『あっ、羽島!』
「…は、はい」
な、なんで電話してきたのかな…
『明後日から夏休み始まるじゃん?それで、その日に花火大会あるんだけど、その…一緒に行かねー?』
「えっ…」
どうして…どうしてそんなに私なんかに構うの?
そんなに揶揄うことが楽しいの?
彼女いるんでしょ?
彼女と行けばいいじゃん…
たくさんの言葉が私の頭の中に浮かんできた。けれど言葉にできない。言えない。
『…!羽島!?泣いてんのか?!なんで泣いてるんだよ?!』
頰を冷たいものがつたった。私は気付いたら泣いていた。どうしてかわからないけど涙が溢れてくる。眼鏡のレンズも濡れて視界がぼやけてる
「っ…ご、ごめ、なさ…グズッ…なんで、も、ない、ですっ…」
私は溢れる涙をこらえてそう言うと、電話を切った
携帯の着信音がすぐに鳴り響く。もちろん五十嵐くんから。何度か鳴り響く電話には私は一度も出ることはなく、諦めたのか、着信は途絶えた
「…はぁ」
ぴんぽーん。家のインターホンが静かな家の中に響いた
「注文してたグッズが届いたのかな…」
玄関の扉を開けると、そこに立っていたのは宅配のお兄さんじゃなくて、五十嵐くんだった
「五十嵐くん…?!」
「電話出ないから、家まで来た」
うん、それはみればわかります
「なんでさっき泣いてたんだよ。俺、なにかしたか?」
なにかしたって聞かれたらしたけど…五十嵐くんは何も悪いことしてないし…
さっきのことを思い出すと、また涙が溢れてきた
「な、泣くなよ…!何があったんだ?!」
五十嵐くんは必死に私の涙を拭った
「…どうして…どうして五十嵐くんは、そんなに…私に構うんですか…」
「どうしてって…」
「もし揶揄ってるだけなら…もう、関わらないでください…」
今まで思っていた言葉が全部出てきた
「か、揶揄ってなんかねーよ!」
「じゃあどうして…!」
「そ、そりゃ…」
そう言った瞬間、五十嵐くんは私の腕を引っ張り、抱き寄せた
「羽島のことが…す、好き…だか、ら…その…」
「っ!」
『好き』確かにそう言われた。けれど、心のモヤモヤはまだ消えない
「なら…杏奈ちゃんと付き合ってるって、どういうことですか…?」
「…はい?」
「放課後、呼び出されて…五十嵐くんは杏奈ちゃんと付き合ってるからって言われて…」
「俺と杏奈が…?付き合ってねーよ?」
えっ…?だって女子が…
「杏奈とはとっくに別れたけど…と、とにかく!俺は、羽島が好きなんだ…!」
「…は、はい…」
改めて好きって言われるとなんか恥ずかしい…
「あー…で、その…つ、付き合ったりとか…」
二次元は置いといて、付き合うとか全く考えたことなかった…けど
「わ、私…!その…私なんかでよかったら…あの、よ、よろしくお願いします…」