3.腐女子、男子と初めて出かける。
待ちに待った休日。今日は予約していたゲームを取りに行く予定があるため、外出中だ。
「こちらでよろしいでしょうかー?」
「あっ、はい」
きたー!ついに…きたあああああああ!オトメイトの新作ゲーム!
私は上機嫌でお店を出た
はやくやりたいなぁー…帰ってからのお楽しみだな、うん。
早く帰って…あ、その前に…
↓my脳内
月島くん、疲れちゃった。どこかで休憩しない?
『はぁ?もう疲れたの?そんなんだから運動オンチなんだよ。…まぁ、別にいいけどさ…どこ行くの?』
…今、虚しいって思った人挙手。
そして!私は!この素晴らしい休日をenjoyしていた!はず…なのに…
「…!」
なんか知り合いっぽい人見つけちゃったぁ?!
ど、どどどどどどどどどどどうしよう!てゆーか、なんでこんなところに?!
…よし…!他人のフリ、他人のフリ、他人のフリ、他人の…
「あれっ?羽島?」
「!」
バレたあああアアァァァ!今の私の服装は…よし、普通だ。…よしじゃないよ!右手には痛バ、左手には月島くんのぬいぐるみって…!
私はカバンの中にぬいぐるみをしまい、カバンを後ろに隠して五十嵐くんの方を向いた
「こ、こんにちは」
「今日はメガネかけてねーんだな。最初、わからなかった」
そのままわからなければよかったのに…
「ここで何してんだ?」
「え、えっと、買い物に…」
「へー、偶然だなー。俺も同じ」
はやく帰ってゲームしたい…!
「…なぁ、今から暇か?」
「えっ?」
「あー…えっと、誕生日プレゼント買いに来たんだけど、店に入りずらくて…もしよかったら一緒に来てくれないかなーって思ったんだけど…」
…ゲームは帰ってからでもいいかな
「私でよければ…いいですよ」
「本当か?!さんきゅー!じゃあ、早速行こーぜ!」
そういうと、五十嵐くんは走ってお店に向かった
…え、ちょ、待って待って待って!速い!走るの速すぎるよ!私の体力がもたないよ!
私は頑張って走って(授業の持久走でもこれくらい頑張れればいいんだけど)お店の前まで来た
「…えーっと、お店って、ここですか…?」
お店の中には可愛い女の子がたくさんいた(二次元には衰えるがな!)
「あ、うん、そうなんだけど…」
えっ…?ええぇえぇぇぇえぇぇ?!私にこの店に入れと?!いやいやいや!オーラすごいから!なんか、もう、キャピキャピオーラ?みたいなのすごいから!
けど、確かに五十嵐くんじゃ入りずらいよなぁ…
「わ、わかりました!行ってきます!」
私は五十嵐くんから買う物のメモを受け取ってお店に入った
うわぁ…なんかすごいなぁ…私なんかが入れるような店じゃない…
私は早くお店から出ようと、いそいで買うものをカゴに入れた
「これと、これと…あ、あとこれ」
大きなクマのぬいぐるみに手と伸ばしたら、隣の人も手を伸ばしていた
「えっ、あ、ご、ごごごごごごめんなさいっ」
「こちらこそごめんね。どうぞ」
私にぬいぐるみを譲ってくれた
「え、で、でも…」
「いいからいいから。君みたいな可愛い子に譲れるなら尚更。…じゃあ、またね」
その人は私にウィンクして去っていった
…またねって、どういうことだろう…
まぁ、いい人だったし、イケメンだったけど…
…攻めだな。モブ相手なら受けだけど。
私はお会計をして、五十嵐くんのところへ戻っていった
「お、おまたせしました」
「マジで助かった!ありがとな!お礼って言っちゃなんだけど、どっかカフェとか行かね?奢るよ」
「えっ、でも…」
「いーからいーから」
私と五十嵐くんはスタバに向かった
店内には読書をしている人、仕事をしている人、カップルなど、様々な人がいた
「羽島、どれにする?」
「えっと…じゃあ、抹茶クリームフラペチーノで…」
「りょーかい。買ってくるから待ってて」
五十嵐くんがレジに並んでいる間、いろいろ考えてた
…どうしてこうなった。
予約してたゲーム取りに行って、五十嵐くんと会って買い物付き合って、今に至ると…
大丈夫だったかなぁ?!イケメンの隣をこんなブサイクが並んで歩いてて大丈夫だったかな?!
すれ違う人達にボロクソ思われてただろなぁ…
そんなことを考えていると五十嵐くんが戻ってきた
「あ、ありがとうございます」
私と五十嵐くんは雑談をした。五十嵐くんの部活の話とか面白い話とか、私の話もちょっとだけした。正直、楽しかった。同級生、しかも男子と話すのはすごく久しぶりだった…
あっという間に時間が過ぎていって、帰らなければいけない時間になった。五十嵐くんも買い物という目的を果たしたため、帰ることにした。
…結局、一緒に帰ることになっちゃったよ?!
どーすんの?!どーすんのこの状況!何も話すことないよ!
とか思っていたけれど、五十嵐くんの方からたくさん話しかけてきてくれた
内容は特に変わったものはなくて、学校の話とか家での話とかした
二人で話しながら歩いていると、少し荒運転をしている車が目に入った。けれど、こっちに来る様子もなかったから、あまり気にしなかった
が、その車は急に車線変更し、私たちの歩いている方へ走って来た
「…!羽島!危ないっ!」
「え」
私は向かってきた車に驚いて、避けきれなかった
(…カゲロウ◯イズみたいだね。じゃなくて!これ夢だよね?ドッキリでしょ?本当に真面目にヤバいやつ?)
轢かれるって思った瞬間、思いっきり引っ張られた
「大丈夫か?!羽島!」
私は五十嵐くんに引っ張られて助けてもらったらしい。いきなりの出来事で心臓がバクバクいっている。
「あ、あああああありがとうございます」
安心したのも束の間だった。今度は違う意味で心臓がバクバクいっている。助けてもらったのはいいが、私は五十嵐くんに抱きしめられた状態になっている。
「い、五十嵐くん…離してください」
「え、あ、ご、ごめん!」
五十嵐くんは私を離すと、手で口を隠した。こころなしか、頬が赤い気がする。
そして長い沈黙が続く…。
「…あ、じゃあ、俺こっちだから」
先に沈黙を破ったのは五十嵐くん。
「今日はありがとな!じゃあ!」
そう言うと、五十嵐くんは走って家に帰ってしまった。
しばらく、走っている五十嵐くんの後ろ姿を見ていたが、だんだん後ろ姿が見えなくなり、私も家に帰ることにした。
家に着くと、着替えて、ゲームやって、同人誌読んで、お風呂に入って、同人誌読んで、ご飯食べて、同人誌読んで、ゲームやって、寝た。
そうしていれば、さっきのことは忘れられるだろうと思っていた。
けれど、布団に入っても、さっきからずっと心臓がばくばくいっている。
全く眠れない。抱きしめられたときの感覚がまだ残っている。
(…男子に抱きしめられたことがなくて、動揺してるだけ…だよね…)