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龍の花嫁  作者: おはなし
第一章 嫁入り
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犠牲

はやっ∑(゜Д゜;)

 これまた豪華な昼ご飯を食べ終わると、沙紀は部屋へは戻ろうとせずに、命を春の棟ではなく初秋の棟へと連れて行った。

 楽しいから、と言う沙紀の言葉に半信半疑でついて行くと、そこに広がっていたのは綺麗な日本庭園だった。

 初日に見た庭とはまた別の庭だ。綺麗な緑に囲まれた空間が、自然の一部を切り取ったように見える。


「綺麗…」

「でしょ? ここにはあんまり人が来ないから、一人になりたい時はここに来るといいわ」


 しばらく木々とじゃれあい、十分に満たされると、気分良く桜の間へと戻ることができた。

 だからといってやることがあるわけでもなく。暇することには変わりはない。


 押入れの中に満杯に詰め込まれた龍ヶ峰家からの支給品を眺めていると、思い出すことがあった。


「沙紀さん、3日後に向けて準備しておきたいんだけど」


 3日後には、鬼瓦朱里の中の"鬼"を取り払うのだ。そのためには失敗できない。神呼とは逆のことだから、心配は募るばかりだ。

 沙紀はテレビを切り、命に向き直った。


「正直、あたしは何をするのかよくわかってないのよ。教えて、命」

「うん、いいよ。とりあえず分かってることは、鬼瓦朱里様が鬼に取り憑かれていて、放っておいたらその鬼に意識を乗っ取られるってことだけど…」


 神妙に沙紀が頷く。

 普通なら到底信じられない話だが、沙紀は命の神呼を目にしている。それだけが要員というわけでもない気がするが、それを彼女が意図的に隠しているのか、命に問い詰める度胸はなかった。


「やることは除霊と似ているよ。多分、沙紀さんにもできるんじゃないかな」

「え? あたしにもできるの?」

「うん。わたしもまだ未経験なんだけど、お姉様たちがやっているのを見てきたから。……お姉様も、あまり力を持っていないんだよ。だけど見事に成功させていたから、きっと」


 姉たちが神呼の力が弱いことを、命は自分のせいだと思っている。だから自分には、これだけの力があるのだと。

 身に余る力。


「でも、それで良かったかな。そのせいで、お姉様たちは自由でいられるんだもの」


 こんな力を持つのは、一人だけでいい。苦しむのも、わたし一人でいいはずだ。

 その考えを口に出すと、親が悲しむから、隠した。ただ隠しても、神々にはバレてしまうのだ。




『そうやって、あなたは犠牲になるのね』


 うん、そうだ。わたし一人が耐えればいいなら、その方がいい。


『苦しみを隠して? それを誰が望んだの?』


 ……自分自身が。


『ああなんて、犠牲心。……命』




 どうして。悪いことではないはずなのに。

 なぜ、みんな悲しむのだろう。

 例に漏れず、沙紀さんだって、そんな顔をする。


「自己犠牲を喜ぶのは、その犠牲になる本人だけなのよ、命。皆が喜んでくれるから、と思うことも、本当は哀しいことなのにね」


 *****


 説明を終えると、沙紀はお風呂の用意をしてくると言って、脱衣所に消えてしまった。

 どことなく疲労感を感じる。なんだか体が重かった。

 長い一日だった、と天井を見ながら考える。この行為は、だんだん癖になりつつあるのだ。


 沙紀さんの秘密を感じさせる朝食に、虎崎白夜との挨拶。そして鬼に憑かれた鬼瓦朱里を見て、地下の牢のような場所に軟禁された雷城伊吹との出会い。

 怒涛の一日だった。目まぐるしく日が回るのは初めてのことで、そのせいでこんなにくたびれた気がするのだろう。

 明日も今日のようなことになるのなら、しっかり眠って英気を養わなければならない。


「命ー。お風呂の用意できたわよー」

「はい、今入ります」


 沙紀と入れ代わりに脱衣所に入り、眠気を押して風呂に入ろうとする。ちょうどいい湯加減で、身にしみるようだ。

 和んでいると、ドアの向こうから沙紀が声をかけてきた。


「そういえば、夕食は響たちと一緒だからね〜」


 ああまた、あの静かな食事が……。


 命の予想通り、朝食と同じような食事はたいへん息が詰まる食事を終えてその後には、昨夜と同じように当主に呼び出された彼女がいた。

 そして、拒否するが受け入れられない沙紀も。



今回文章がど下手ですが見逃してください。

とにもかくにも、やっと二日目が終わりました(*´Д`)

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