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龍の花嫁  作者: おはなし
第一章 嫁入り
20/42

直談判

遅くなりました!

短いです。すみません。


 鬼瓦朱里が龍ヶ峰家を後にしたあと、命は三人に訴えかけた。

 それは命らしからぬ大きな声で、眉尻を下げた悲壮な表情でのことだったから、沙紀と泰澄は驚きを隠せないでいた。

 しかし、さらに衝撃的だったのは、命の訴えの内容だった。


「鬼瓦朱里が、鬼に取り憑かれている…!?」

「間違いないです。アテナも言っていました。あの方は、もう取り返しの付かないくらい、鬼に魅入られてしまっています。早く引き剥がさないと…」

「完全に鬼になってしまう、と。そんなまさか…」


 有り得ない、とは言えないのが、この世の裏側を知るものだ。


「とにかく、わたしをあの方に会わせてください。方法はなんとかどうにかしますのでっ」

「命が無責任なこと言ってる!」

「ご、ごめんなさい…」

「ばかっ、怒ったんじゃないわ! 嬉しいのよ」

「それはどういう…」

「意味なんかいらないの! 今は喜びだけ噛みしめさせて!!」


 意味の分からないことを言う沙紀に首を傾げる。何が喜ばしいことなのだろう。


「神呼の姫」


 訳も分からず沙紀を見ていると、当主が声をかけてきた。緊張しながらそちらに向き直る。

 何を言われるのかわかったものじゃない。ドキドキと胸を慣らしながらその口から出てくる言葉を待った。


 一方の当主は、あんまりにも怯えられているので若干ショックを受けている。今まで彼女に優しい言葉こそすれ、厳しい言葉などかけたこともないのに、だ。

 理不尽さに嘆いているのをおくびにも出さず、怯えながらも真っ直ぐ目を合わせてくる命に告げた。


「いいだろう、許す。ただし3日後だ。その日以外はできない」


 気前のいい快諾に、命は顔を輝かせた。ありがとうございます、としきりにお礼を繰り返す。


「やっぱり当主様、お優しいですね!」


 その一言に、当主以外の二人が驚き目を見開く。

 優しい? こいつが? と沙紀は命と当主を交互に見やり、泰澄は意外そうに命を見ている。


「そうだ。俺は優しい」


 どの口が言うかっ! と盛大につっこみたい。しかし耐える。珍しく当主が嬉しげだ(昔からの知り合いにしかわからない微々たる変化)。いくら嫌いだからといっても、ここで水を差せば死ぬまで恨まれそうだ。


 そんなことを沙紀が考えているとは知らず、命は当主の台詞に大きく首を縦に振って同意した。


「沙紀さんが教えてくれたのは真逆なことでしたから、びっくりしました。たぶん仕事をしているときのことを教えてくださったんですね」

「へぇ…」


 当主が沙紀を目をすがめて見やる。本来なら気まずくてつとめを逸らすところを、彼女は全ての力を眼に込めて睨み返してきた。

 その、常識とは真逆な行動をするところを虎崎 白夜は好ましく思っているふしがあるのだが、そんなことを彼女が知るわけもない。墓穴を掘っている。


 眼飛ばす沙紀には気づかず、命は背の高い当主のを見上げた。

「これからずっと一緒にいる方が、優しい人でよかったです」

 綻ぶような笑みを向ける。向けられた相手は、その眩しい笑顔からまた目を逸らした。


 命は感謝を示すとき、目を細めて日だまりのような笑みを浮かべる。見ているとぽかぽかしてくるような、親しみのある笑みだ。

 いつか太陽のように光り輝く笑みも見てみたいものだ、と当主と沙紀は珍しく、同じことを思った。


次は早めにあげたいです。

応援くださいっ! 冗談です笑

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