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龍の花嫁  作者: おはなし
第一章 嫁入り
18/42

挨拶

結構早くないですか!?


 矢面に立たされるのは、ここへ来て二度目だ。

 生家でもできなかったことがここでは嫌でもさせられるのだから、新鮮な驚きばかり感じる。


 そうか。こうやって人は、成長していくのだ。


 *****


 テーブルを介して目の前に座るのは、龍ヶ峰家と親しい関係を持つ虎崎家の現当主の次男坊である虎崎 白夜というお方らしい。先程簡単な自己紹介をされた。

 幼い頃から響や沙紀とは懇意にしていて、所謂幼馴染みというものらしい。

 だから気負わずに軽口が言えていたのだと納得する。

 虎崎 白夜は現在二十三歳で、最近まで海外留学していたらしい。日に焼けた肌や髪が、彼は日本のほぼ反対側にいたのだろうということを教えてくれた。


「響の婚約者になったと聞いた。さぞ辛いだろう。こいつは人の心を毛ほども理解しない冷血漢だから」

「そう言うお前は自尊心だけは一人前に鍛えられた凡人だろう。留学したところでその頭が変わるとは思えないが。さっさと兄のために働いたらどうだ」

「黙りなさいそこの二人。命の前では発言を慎みなさいよね。あたしはあんたたちがどうなろうと知ったこっちゃないけど、命に何かあったら容赦しないわよ」

「珍しく良いことを言う。白夜、そういうことだ」

「お前ら、変なところで同調するな」


 若干置いてけぼりの命は、手持ち無沙汰で泰澄の淹れてくれた茶を飲んでいた。

 小広間は座敷で、長いテーブルと座布団が六つ置かれていたので、命は当主と沙紀にはさまれる形で座っていた。対面には虎崎 白夜がいる。

 二人のおかげで今のところ命は一言も話さずに済んでいるが、いつこちらに矛先が向くのかと気が気ではない。


「それで、あたしたちに何の用? まさか帰還報告だけとか言うんじゃないでしょうね?」

 沙紀が鋭い目つきで訊ねる。

 つまらないことだったら尻蹴っ飛ばして追い出してやる、と言外に告げていた。

 若干怯みながら、白夜は答えた。その視線は真っ直ぐ、命を見つめている。


「俺…いや、私は龍ヶ峰家ご当主の婚約者となられた“神呼の姫”である神楽 命様にご挨拶賜ろうと押しかけた次第である、虎崎家現当主が次男、虎崎 白夜といいます。お見知りおきを」


 背筋を伸ばし、礼節をわきまえた行動をすると、彼は威厳を持つ。

 その切り替えは分かりやすく、そのせいでどこか裏があるようにも思えてしまう。

 こういった場合の返しを用意していなかった命は、うろたえて沙紀に助けを求める視線を送った。

 心得た、と言うように沙紀が頷く。


「なんでこのタイミングなのよ。そもそもどうやって知ったわけ?」

「響が嫁を取るのは前から噂になってたからな。まさか神楽家からだとは思わなかったけど」


 と、しれっとした顔でお茶を飲んでいる当主をじと目で睨む。

 まるで相手にされていないが、白夜は当主が視線を合わせないのを別の意味に取ったようだ。満足げに鼻を鳴らしている。

 命が何をそこまで当主を意識しているのか疑問に思っていると、沙紀がそっと耳打ちしてきた。


「白夜と響は同い年で、しかも名家の息子同士ってことで何かと比べられてきたんだけど、響の方がいろいろ上で。だからあいつは些細なことでも響に勝てると嬉しいのよ」

「なるほど…」

「うん。だからね、あいつの前では当主様の方が~とか、比べる発言しちゃだめよ。面倒だから」

「気をつけます」


 頷いて、しかと胸に書き留める。面倒なのは御免被りたい。

 気を取り直したように姿勢を改めた沙紀は、白夜に向き直るとまじめな顔で告げた。


「白夜、あたし命の世話係になったのよね」

「らしいな。懐かれてるじゃないか」

「うん。つまりそういうことで、あたしは結婚しないから」


 命は目を見開いて絶句した。



(๑⊙o⊙๑)←命

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