第5話:落ち着け!
拳銃を持って妙に真剣な眼差しをした佐久間に、アリスは言葉を失う。
「伏せろ!」
佐久間の声が聞こえたと同時に、カーテンで隠されていた窓から何十発もの銃弾が飛びこむ。途端に響く、耳を裂く様な銃声。
「なっ……なに!?」
「いいから、伏せろ!」
止まることの無い攻撃。
「痛っ」
アリスは銃弾を浴びて散り散りになったワインボトルの破片に躓いてしまった。尖った破片によりアリスは足首から膝までざっくりと切っている。アリスの白い肌に赤い血がじわじわと広がっていった。
「よそ見してんな、死ぬぞ!」
「分かってるわよ!」
アリスはずきずきと痛む足を引きずり、ソファの影へと身を移した。
「なんなの一体。まさか、佐久間。あなたの知り合い?」
「おめぇのICチップを狙って来たに決まってんだろ!」
「じゃあ、私は行かなきゃ……」
銃弾のする方向へ行こうとしたアリスを佐久間は勢いよくひっぱる。
「何考えてんだ。死ぬぞ!」
「ICチップを狙っている奴らなら、私は会わなきゃいけないの! 離して!」
佐久間は動揺するアリスの肩を大きく揺さぶった。
「落ち着け!」
こうしている間にも奴らの攻撃は止むことは無い。佐久間は取り乱すアリスを宥めるように話し掛けた。
「おめぇが何の理由で死に急いでるかは知らねぇ。だが、目の前で死なれちゃあ、後味が悪い。話は後でだ。今はここから出る事が先決、だろ?」
「出るってどうやって……」
佐久間の言葉に、冷静を取り戻したアリスは、佐久間を見て不安そうな表情を見せた。
「俺を誰だと思ってやがる」
佐久間は髭を2、3回撫で、自信たっぷりに笑った。