第13話:おめぇは駄目だ。留守番でもしてろ
「脚の傷も残っていませんし、これなら十分でしょうね」
ネスティはアリスの脚の包帯を取り、満面の笑みで言った。あれから数日が過ぎ、アリスの怪我も完治した。そうなれば、いよいよ計画を実行する時が近づく。
「決行はいつ?」
「明後日の夜、フィンデル銀行でパーティが行われる。その時がチャンスだ」
「もうすぐ……あの男を……」
復讐をかなえる時がきたのだ。アリスは、震える手を懸命に抑えた。
「おい、ネス。明後日の準備だ。買出し行くぞ」
佐久間はSSKのキーを持ち、ネスティに言った。
「ええ、わかりました」
「待って、私も行くわ」
アリスは慌てて佐久間の後を追う。
「おめぇは駄目だ。留守番でもしてろ」
アリスに冷たく言い放つ佐久間。佐久間の言葉に納得のいかないアリスは、思わず口調を強めた。
「どうしてよ! 私も連れていって」
「アリス、すぐ戻りますから。留守を頼みます」
「分かったわ、待ってる」
アリスはネスティの言葉を渋々受け入れた。佐久間もネスティも、どこか様子がおかしい。アリスはそんな事を思った。
******
アリスを置いて、佐久間とネスティはSSKに乗り込んでいた。買い出しなんてハッタリもいいところだ。先程から、同じ場所をまさに堂々巡りしている。
「本当に連れて行く気か」
「何がですか?」
「惚けるのはよせ」
「心配ですか、彼女が。珍しい事もあるものですね。あなたが他人に興味を持つなんて」
ネスティは栗色の毛を風に靡かせて言う。佐久間は急に黙り込み、煙草に火をつけた。
「図星を指された訳ですか。佐久間は本当の事を言われると黙り込む癖がありますからね」
そう言ってネスティは意地の悪そうに笑った。
「言ってろ」
佐久間は不機嫌さを増して、アクセルを強く踏み込んだ。
次回には新しい仲間が出現します。