転生してえ
「はあ、転生してえ」
吉田健志、47歳独身、三年前に両親が自動車事故に巻き込まれて他界。
今は両親の保険金と事故の慰謝料でのんびり引き篭り生活を送っている。
おい神様、見てるならこんなラノベ展開の最適人材なんてそうそう居ないんだから、サッサっと転生させろよ。
「おっと、今日はジャソプの発売日だったな」
サッと上着を羽織って外に出ると、大通りを挟んだコンビニへ向かった。
コンビニ店員のおざなりな挨拶を聞き流して店を出る、ちょうど歩行者信号が赤に変わった所で道に出ようとしている婆さんがいた。
「危ないぞ!」
さっと婆さんの腕を引いて歩道へと戻すと、運動不足で弱っていた俺の体がバランスを崩して道路へと飛び出した。
目の前に迫るトラック。
俺の頭の中には『これでやっと転生できる』と言う考えだけが浮かんでいた。
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「あっ、目が開いたよ」
俺の顔を上から見下ろす二人の人物の顔は、良く知っているが初めて見る顔だった。
金髪で碧眼、耳が尖って整いすぎた顔立ちのエルフ。
じんわりと転生した事を実感する。
「待ってたよー、健志くん」
途端に覚醒する前世の記憶。
「チッ!」
「健志くん中々転生して来ないからさぁ。お父さん達三百年も待ってたよ」
ウチの家系は代々転生しては同じ家族とばかり暮らしているのだった。
「はぁー、たまには違う家族の元に転生してぇ」




