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偽物令嬢〜前世で大好きな兄に殺されました。そんな悪役令嬢は静かで平和な未来をお望みです〜  作者: あいみ
第一章

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信じるつもりはないくせに

 さて……。


 これはどういう状況かな?


 レクリエーションは何とか終わったと安心していたら長男に呼び出された。


 ──生徒会室ってのがまた……。


 教室に来られるより遥かにマシだけどさ。


 校内放送なんてないから生徒会メンバーであろう生徒が呼びに来た。

 かなり怯えていて、無理やり行かされたのだろう。


 そうよね。いくら生徒会長の命令でも極力、私とは関わりたくはない。

 距離を取って傍観者でいられる立場から一歩も動きたくはなかった。


 毅然とした態度を崩すことなく後ろをついていけば、恐怖から背中は縮こまったまま。


 ──何もしないっての。


 声をかければもっと萎縮させてしまう。私なりの優しさで敢えて沈黙を選んだけど、それは失敗だった。


 陽気に話せる性格でも、仲良く話す仲でもないからそれ以外の選択肢が浮かばなかったのも事実。


 とまぁ、ここに来るまでの過程はどうでもいいとして。

 呼び出したくせにさっきから私には目も向けず書類仕事に精を出す長男にため息をつきたい。


 帰っていいかな。時間の無駄すぎる。


「はぁ……」


 ようやく顔を上げたかと思えばため息をつかれた。


 ──私もつきたいんだけど。


 握りしめた拳を見られる前に後ろに隠した。殴りたい衝動にかられてしまったけど、ここで騒ぎを起こせば色々と面倒になる。


 こういうときはアレだ。ほら、精神統一?


 脳内で滝に打たれるイメージで、湧き上がる怒りを鎮める。

 冷たく勢いのある滝は感情の波を一定にしてくれた。


「せめて言い訳くらいはすると思っていたが」

「はい?」

「ユファンが平民であるという理由だけで危害を加えたそうだな。彼女が光魔法の使い手だから嫉妬しているのか?」


 その話か。婚約者様が報告でもしたんだろうな。


 未来のお義兄さんとは随分と仲が良いね。

 それも会って間もないクラスメイトのために貴重な休み時間を削るなんて。


 ──私には一秒だって割かないくせに。


 これがヒロインと悪役令嬢の差。


 どうせ何を言っても聞く耳を持たない。長男がシオンの言葉をまともに聞くとも思えないし。


 言い訳をしたらしたで怒るに決まっている。やること言うこと、全部が気に食わないくせに。


 言い訳を求めるなんて矛盾している。


 このまま黙ってるほうが得策ね。


 今日は帰ったら何をしようかな。この沈んだ気分を上げるにはノアールと遊ぶしかない。


 よく考えればノアールの遊び道具がなかった。


 そうよね!ノアールは唯一の家族で友達。うんと贅沢させてあげないと!!

 お金なら腐るほどあるんだし。

 私が稼いだわけじゃないけど、公爵家からしたらはした金。いくら使おうと痛手にすらならない。


 ーバチン!!


 乾いた音と頬の痛み。じんわりと熱くなる。

 頭と体が叩かれたと瞬時に理解した。


 拳は握られていなかったけど、中々の力。男が女を躊躇うことなく……。


 教育でも躾でもない。これはただの暴力だ。


 これがこの男の本性。


「なぜお前のような出来の悪い奴が私の妹なんだ」


 それはこっちの台詞よ。例え偽物でも、あんたみたいな奴の妹なんて最悪だっての。

 ゲーム上の設定だから仕方ないでしょ。


 所詮は血が繋がらないとはいえ、今はまだ兄妹。


「お話は以上でしたら私はこれで」


 何も求めない、期待すらしていない。私は何のために呼ばれたのか。


 あぁ。暴力を振るいたかっただけね。


 私は長男と違ってちゃんと礼儀作法は身に付けている。


 嫌いな相手にも頭は下げる。


 バタン!!とドアを力いっぱい閉めたいのを我慢して令嬢らしくお淑やかに振る舞った。

 上品さには欠けるかもしれないが及第点ではないだろうか?


 ここには大嫌いな長男と次男がいる。それだけでも気分が悪いのに、ぶたれたことによって何かもう……色んなことがぐちゃぐちゃ。

 感情が混ざり合うとこんな気分になるんだ。


「あーくそ!ムカつく!!」


 誰もいないのを確認して、大声出してストレスを発散させた。


 言い訳すると思ってた?


 したらしたで、叩くくせに!!


 公女でありながら嘘をつくとは恥を知れ!とか言ってさ。


 この涙はシオンのもの?私の意志とは関係なく溢れてきた。


 悔しいのと悲しいのが同時に駆け巡る。


 人が通る前に泣き止まないといけないのに、どんなに拭っても不安定なせいで感情の制御が効かない。


 ユファンが私は何もしてないと言えば言うほど、私が脅して言わせたと思われる。


 シオンは過去にそれだけのことをしてきた。信頼に値しないのもよくわかる。


 それでも……信じようとさえしてくれないのは辛いなぁ。


 一欠片なんて贅沢は望まない。一粒の砂のように小さくて良かった。

 信じようとさえしてくれたら……。









 ꕤ︎︎






「会長。妹……シオン嬢と何かありました?」

「何のことだ」

 「あーー……いえ。何でも」

 「それよりアル。一年のユファン嬢。彼女を気にかけておけ。シオン・グレンジャーが手を出すかもしれん」

「妹でしょう?信じてあげないんですか」

「あの女にそれ程の価値があるとでも?」

「はは……そうですか」

「もしあの女が何かするならすぐ退学を命じろ。いいな?」

「(貴方はきっと知らないんでしょうね。あんな風に泣くシオン嬢を)」

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