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偽物令嬢〜前世で大好きな兄に殺されました。そんな悪役令嬢は静かで平和な未来をお望みです〜  作者: あいみ
第一章

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名高きグレンジャー家

 その日の放課後は珍しく婚約者様が一緒に帰ろうと誘ってきた。


 ──え。嫌なんですけど。


 明日は隕石でも落ちて世界滅亡するのかな。


 丁重にお断りをした。私は攻略者を攻略するつもりがないから、好感度を上げるみたいなイベントには参加しない。したくもない!


「君が行きたいと言っていた店が今日オープンだっただろ?」


 どこの女と間違えているのやら。


 婚約者様に限ってそんなヘマはないか。だとしたら本当に私?


 あ!そっか。私が転生する前のシオンとの約束。


 なるほどなるほど。それなら合点がいく。


 ま、私には関係ないけど。約束したのはシオンであって私じゃないし。


 嫌いな相手との約束を覚えていたのは評価に値する。ご機嫌取りのために思い出しただけかもしれないけど。


 ヘリオンがこんなクズキャラだったとは。


 そうまでして婚約破棄したくないのね。


 バカじゃないの。


 思わず口に出そうになった。


 周りからは羨む声が聞こえてくる。次期大公様と放課後デートなんて素敵、と。


 ──じゃあ、あんたら行けば?


 好きでもない人と二人きりで出掛けるなんて苦痛だからね。


「私との約束よりも大事な用があるのか」

「はい」


 笑顔で即答した。


 どんな噂が流れても気にしなければいい。


 だって私の評判。既に最悪だもん。


 それにこの国で、私と恋愛する度胸を持った男はいない。


 無理に引き止めてこようとする婚約者様にそっと囁いた。


「ユファンさんと行けばいいじゃないですか」


 含みのある笑みを最後に帰宅した。





「ただいまノアール。いい子にして……何これ……?」


 窓が壊れているのはいい。本当はよくないけど。


 どうして私の部屋がこんなにも荒らされているわけ?


 服は全部ズタズタ。鏡は割られベッドには大量のゴミが放棄。


 犯人は相当私を怒らせたいわけね。いいわ。望み通りにしてあげる。


【シオンシオン】

「良かった。無事だったのね」

【アイツだよ犯人。あの男!!】

「長男?」

【ちーがーうー!!黒い服着た男】

「黒い?あぁ……。あの執事ね」


 言い負かされた腹いせにここまでしたわけ。頭どうかしてるんじゃない?


 仮にも公女に対して……!!


 ノアールは付いて来いと言うようにトテトテと前を歩く。


 そっちにいるのね。


 カバンを投げ捨て殺意と怒りのオーラをまとってあの執事の元へ向かった。


 「夜な夜な部屋に招くだぁ?だーれがあんな不気味な公女の相手なんてしたがるんだよ。思い上がんなっつの」


 他の執事と楽しくお喋りするその背後から魔法で床に叩きつけた。起き上がれないよう普段の何倍も上から圧をかける。


 シオンはいつも手加減をしていた。もし本気で抑えつけようものなら屋敷の廊下は大惨事。


 使用人も入れ替わりまくってる。最終的には誰も働きたがらなくなるだろう。


 自分の死を予感した執事は情けないことに涙を浮かべた。


 魔法を解いて一息つかせる間もなくネクタイを引っ張り、そのまま顔をぶった。爪が伸びていないのが残念。引っ掻いてやったのに。


「お、お嬢様!?一体何を!?」

「私が怒ってる理由がわからない?」


 優しく問いただすほど私は優しくない。


 執事のこの余裕は何?状況が理解出来ないほどバカではないはず。


「おいシオン。何をしてんだ」


 そういうこと。次男のご帰還ってわけ。


 事情も聞かずに一方的に私が痛めつけると信じて疑わない。


 弱い者にしか反発出来ない奴とでも思っているのかしら。


 ああ……反吐が出る。


「私の部屋を汚したこの者に罰を与えているんです」

「たかが汚れ一つでそこまでするのか」

「では見てきたらどうですか。私の、たかが汚れ一つの部屋を」


 不機嫌そうに舌打ちをしながら一度はここを離れ、戻ってきたときには更なる怒りに燃えていた。


「お前がやったのか?コイツの部屋をあんな風に!!」


 ここにいるのが本物のシオンだったら、次男が怒ってくれているのとに喜ぶのかな。


 でもねシオン。違うのよ。次男は私のために怒っているんじゃない。


 グレンジャー家の名前を甘く見て見下し、舐めた態度を取った執事に腹を立てているだけ。


 私は騙されない。絶対に


「何の証拠があって私だと!?」

【コイツ。シオンの宝石盗んだ。青いのと赤いの】


 上着のポケットを探ると平民では買えない大きさの宝石で出てきた。


 この屋敷で宝石を持っているのは私だけ。例えやっていなかったとしても、盗みを働いた動かぬ証拠。


 そして報告を怠った。


 少なからずこの宝石を手にしている時点で私の部屋に足を踏み入れたのは明白。それなのに仲間内でバカみたいに笑っては、知らんぷりをした。


 知らなかったなどと言い逃れ出来る雰囲気ではなくなった。


「ふざけた真似をしてくれたな」

「申し訳ありませんラエル様!!どうかお許しを!!」

「グレンジャー家への不遜。ただで済むと思うなよ」


 ちょっと待ちなさいよ。


 どうして何かされたのが、次男みたいになってるの。

 私の部屋が荒らされ私の宝石が盗まれた。許しを乞うのは私にでしょ。


 被害者ではなく無関係の部外者が許すかどうかを決める?


 ──おかしすぎるそんなの!!!!


 この家の奴ら全員がシオンを見下していた。


 何をしてもいい。何を言ってもいい。


 なぜならシオン・グレンジャーはこの世界の誰にも必要とされていないのだから。


 必要とされないとはつまり、存在していないのと同じ。


「おいシオン。コイツの罰はお前が……あれ。どこ行った?」


 使用人の分際で主人への攻撃的態度。


 全部……全部(あんたら)のせい。


 綺麗に掃除したところでゴミが散らかされたことに変わりはなく、この部屋は二度と使いたくはない。


 そもそも。私のために部屋の掃除をしてくれる者など、いやしないのだ。


 部屋なら腐るほど有り余ってる。


 風通しが良すぎて困っていたとこだし、いい機会だし部屋を移ろう。

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