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偽物令嬢〜前世で大好きな兄に殺されました。そんな悪役令嬢は静かで平和な未来をお望みです〜  作者: あいみ
第一章

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味方

「ノアール。今日はもう帰るのやめようか」

【あの男がいるから?】

「気分じゃないだけ。それよりもどうしてユファンを引っ掻いたの?」

【あの女きらい!!シオンの心を黒くするから】


 私の妬む心をノアールは見抜いている。壊れてしまわないようにユファンを遠ざけようとしてくれたのか。


 ──ありがとう、ノアール。


 図書館に行くだけだったからお金はないけど、グレンジャー家の名を出せば後日、家のほうに請求は届く。私に信頼がなくても、グレンジャーならば話は別。ぼったくる勢いで請求したらいいんだ。彼らからしたら、はした金なんだし。


 どうせなら高級なとこに泊まりたいな。ただ高いだけじゃない。

 ちゃんと私を客として扱ってくれるところがいいな。


 ま、ないだろうけど。そんなとこ。私の怒りを買わないように、なるべく近づかないことを心掛ける。


 腫れ物扱いされることは目に見えていた。

 死にたくないと心の中で何度も繰り返しているんでしょうね。


 いつだって感情は顔や態度に表れる。本人達は隠しているつもりらしく、私も見て見ぬふりをしてあげてきた。


 歩いているだけなのにたくさんの視線が注がれる。水槽の魚ってこんな気分なのか。


「お嬢様。夕刻の鐘がなる前に帰宅するように何度も申し上げているはずですが」


 メイド長のメイ。


 三十年くらい前までは貴族だったけど、家が没落してしまい爵位が剥奪された。婚約も破棄され友人達にも見捨てられ、平民として日々を暮らしていた。


 そんなある日。魔法の才能を買われて公爵家に拾われ、以来一流のメイドになれるように日々努力してきた。その甲斐あって若くしてメイド長に登り詰めた努力家。


 グレンジャー家ではメイが魔法の基礎を教えてくれる。小公爵様達もメイの才能を認めているからこそ、元貴族とはいえ言うことは聞く。


 素直な兄と比べて手のかかる私には何も教えてくれなかった。


 授業内容は興味があったけど覗いたことは一度もない。私を嫌っている人達と同じことをしたくなかったから。


「早く帰りますよ」

「帰る?私を人間扱いしないようなあんな家に?使用人の分際で立場を弁えないメイドがいたけど。貴女の教育はどうなってるのかしら?」

「彼女はクビにしました」

「へぇー。そうよね。公爵様は仕事をサボる人は大嫌いだし」

「いいえ。私が最終判断を致しました」

「貴女が?どういうこと?」


 確かにメイド長であるメイならその権限を持っている。

 でもなぜ?


 今まではずっと見て見ぬふりをしてきたのに。


「お嬢様。あちらに馬車を待たせております」

「わかったわ」


 こんな人通りでは話せないということね。


 大人しく後をついていくとグレンジャーの家紋が入った馬車が待機していた。


 御者は私を見るなり震えながら頭を下げた。


 十六年間あの家に住んでるけど初めてだ。乗るの。


 どこに行くにしても私だけは除け者にされて、いつも借りてきた馬車。


 そうまでして同じ空気を吸いたくなかったんだ。


 今となっては私だって嫌だけどね。狭い空間にあんな人達といるなんて。


 地獄かよ


 って思う。


「で?メイド長様は私に何を言いたいのかしら?」

「私の監督不行き届きでお嬢様に不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」

「聞きたいのは謝罪じゃないんだけど」

「こんなこと言い訳にしか聞こえないかもしれませんが、私には闇魔法なるものを理解しておりません。故に、何をどう教えていいのかわからず公爵様にお嬢様の教師にはなれないと申しました」

「それを信じろと?」

「いいえ。ただの戯れ言と思って下さいませ」


 何が目的なの。


 私の機嫌を取ってもメリットはないはず。


 考えるだけ無駄だ。この世界にシオンを好きになる人間なんていない。


 都合のいいそんな言葉に騙されたりはしない。きっと裏がある。


 もしかして人を操る闇魔法を使って何かを企んでいるのかも。


 だとしたらなおのこと、メイとは距離を置かないと。利用されるなんて真っ平よ。


 これからの私は真っ当になるの。そしてバッドエンドを回避する。


 みんなが幸せになれるように私だけが努力するんだから邪魔しないで。



「お嬢様が世間で悪役令嬢と呼ばれているのは存じ上げております」

「まぁ事実だから。バカみたいに買い物をして、気に食わない人はいじめて、光魔法のユファンさんを殺そうとしたのだから」

「いいえ。お優しいお嬢様が人を殺めようとするはずがありません」

「は……?」

「私は信じております」


 どうして……。私が一番言って欲しかった言葉を……。

 嬉しいけど私は流されない。


「誰にそう言えと頼まれたの?小公爵様?私が怒りに任せてグレンジャー家の名を傷つけないように」

「本心です!!」

「私の何を知ってそんな無責任なことを口にしてるわけ?」


 腹が立ってきた。


 百歩譲ってそうだったとしても、使用人達が私にしてきたことをずっと見て見ぬふりしてきた事実は変わらない。


 この十六年間。私がどんな目に合ってきたか。どれだけ孤独だったか。


 メイの言葉に耳を傾けるのもバカらしくなり、外を眺めているとユファンと婚約者様が仲良さそうにアクセサリーショップの前にいた。一瞬のこととはいえ目はめちゃくちゃいい。見間違えるはずがない。


 さっきまで母親といたのに。それとも母親のほうが気を利かせて先に帰った?


 あんなに優しく笑う婚約者様は初めてだ。


 もしかしてこれって、半年待たずに婚約破棄出来るんじゃ……?


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