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あーかい部! 17話 料理下手

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。



3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!


趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!


面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!


独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)



そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室。


白ちゃんは1人、静かな部室でパソコンのキーボードを鳴らし、




「はむっ……、」




購買のコロッケパンを貪っていた。




「あれ?白ちゃん早いな。」




ひいろ入室。




「はむっ……、こんにちはひいろちゃん♪……ってことは、もう授業終わりの時間……。」


「授業中もここに来てるのか?」


「たまにね。ここのちょうど良い狭さが作業するのに良いのよ。」


「それ、わかる気がするな。」


「……ごちそうさま。じゃあもうすぐ2人も来るわね。」


「コロッケパン?」


「お行儀悪かったかしら……///」


「ああ。……お婆ちゃんならキレていた。


「お婆ちゃん?」


「ワタシのお婆ちゃん、食に関してはうるさいんだ。」


「ひいろちゃんってお婆ちゃんっ子なの?」


「そうだ!毎朝ジョギングするくらいには健在だぞ♪」


「それはすごいわね……!?」


「むしろ元気すぎるくらいだ。調理中につまみ食いでもしようものなら……思い出したくもないな。」


「こだわりが強いのね。」


「ああ♪コロッケパンといえば、お婆ちゃんの作るコロッケは絶品だ!」


「コロッケってそんなに差が出るものなの?」


「出るに決まってるだろう。出来合いのコロッケパンとお肉屋さんのコロッケとかでも違った味わいじゃないか?」


「あ!それわかるかも。お肉屋さんのコロッケって美味しいのよね〜。」


「手作業で粗く潰したジャガイモとバキバキに立った衣の味わいは、購買では得られないからな。もちろん、ソースをふんだんに吸って柔らかい食感になった購買のコロッケもまた一興だがな♪」


「食べもののことになると饒舌なのはお婆ちゃん譲りかしら?」


「それは……そうかもしれないな。」


「あら?今日は素直ね。」


「食に関して嘘をつくのは食材に失礼だからな。」


「真摯なのね♪」


「だから、ながら食べは行儀悪いぞ?」


「う"っ……はぁ〜い。」




しばしの間、白ちゃんは無言でコロッケパンをご賞味し、完食した。




「コロッケの話をしたら、なんだかお腹が減ってしまったな……。」


「なんだか悪いことしちゃったわね。」


「いや、いいんだ。そういえば白ちゃんは料……すまない、忘れてくれ。」


「答えさせてよ!?」


「だって白ちゃん、私生活終わってるじゃないか……。」


「それはそうね。手料理なんて調理実習以来ご無沙汰だし。」


「今日は素直なんだな。」


「……さっきの意趣返し?」


「そんなところだ♪」


「そういうひいろちゃんは料理するのかしら?」


「するぞ。」

「嘘でしょ……!?」


「失礼だな。」


「そんな、あーかい部の女子力最底辺争いから一抜けするなんて……!?」


「きはだも料理できるから、あさぎとの一騎打ちだな!」


「いやぁぁああ!?」


「それはそれであさぎに失礼じゃないか……?」


「そうだけど、そうだけど〜〜!」


「嘆くくらいなら料理すれば良いのに……。」


「無理よ、私に料理なんて……、




白ちゃんは床に崩れ落ちた。




「何がそんなに無理なんだ?刃物が怖いとかなら無理にとは言えないが……。」


「それは全然大丈夫。寧ろ刃物を捌くのは得意だから。」


「刃物『で』捌くんじゃないのか……?」


「あ"……そうそう!切るのは得意よ!?うん!」


「じゃあ調理の部分がダメダメなのか。」


「ダメが1つ多くない?」


「火が怖い……とか?」


「いきなり人類の進化をほぼ否定してきたわね……違うわよ。」


「じゃあ動物やお魚さんがかわいそう……、


「そんなピュアな心を持っていたかったわね……。」


「食材の声が聞こえる……!」


「急にスピリチュアルかっ!」


「じゃあ一体何がダメなんだ……っ!?」


「ダメなところがないのがダメなのかもしれないわね……。」


「じゃあ略してダメダメでいいな、また明日。ダメダメ先生。」


「見捨てないでよおぉぉ……!」




白ちゃんは部室から出ようとするひいろの腰にしがみついた。




「……はぁ。少しは真面目にやる気になったか?」


「もう『お魚さんかわいそう……』とかいわないくらいには。」


「またあし


「待って待って待って待って〜〜!?」


「はいはい。じゃあどこで失敗するのか聞かせてくれ。」


「どこで……う〜ん……、」


「最後に作った料理の行程とかでもいいから。」


「最後に挑戦したのはカレーだったかしら?確か、お鍋に水とルーと具材を放りこんで


「……もう充分だ。」


「な、なによちゃんと玉ねぎはみじん切りにしたし、お肉だって鮮度が落ちないように開けてからすぐ切って鍋に入れたわよ!?」


「……一応聞いておくけど、味付けは……!」


「はっは〜ん?さてはひいろちゃん、私が隠し味のことも知らないと思ってるのね?」


「いいから何を入れたんだ……。」


「えっと、味噌にチョコにりんごにバナナにソースにイカにチリソー


「もうだめだ……おしまいだ……ううっ……、」




ひいろは床に膝をつき手をつき己の無力さを悔やんだ……。




「な、なによ!?」


「ワタシに白ちゃんは救えない……。」


「こんなところで諦めるの!?」


「よく言えたものだな。」


「はいはい、で?何かダメなところはあった?」


「白ちゃんの舌が答えを出していたんじゃないか?」


「ゔぐっ……!?」


「ワタシから言えることは1つ……白ちゃん。レシピを、見てくれ……。」




部室を去るひいろの背中は哀愁に満ちていた……。






あーかい部!(4)




ひいろ:投稿完了だ!


白ちゃん:コロッケパン美味しかったわね


ひいろ:ワタシは食べてないんだが


あさぎ:また飯テロでもされたの?


白ちゃん:しないわよっ!


きはだ:じゃああんた、その腕の墨はなんだい?


ひいろ:するってえと白ちゃん、島帰りかい?


白ちゃん:誓って殺しはしていませんっ!!

白ちゃん:って罪人じゃないんだから、いつの時代の話よ……


あさぎ:島流しってけっこう長いことやってたみたいですけど、2人の口調から考えて江戸時代くらい……?


白ちゃん:それで江戸っ子口調だったのね


きはだ:や〜い前科者ぉ


白ちゃん:はいはい、いいからさっさと読んできなさい




あさぎ:私ってそんなに女子力低いの?


きはだ:うん

ひいろ:ああ


あさぎ:えぇ……


白ちゃん:みたいよ


きはだ:争え……争え……


あさぎ:デスゲームじゃないんだから


ひいろ:でもこのままだと白ちゃんみたいになっちゃうぞ?


白ちゃん:そうよ?


きはだ:肯定的なの草ァ!


あさぎ:そんな、いやだ……死にたくないよぉ……!?


白ちゃん:おい


きはだ:悔しかったらレシピ通りに作るんだねぇ


白ちゃん:あんなにまどろっこしいことみんないちいちやってるの?


ひいろ:白ちゃん……何気なく食べてる味覚はそのまどろっこしいことの賜物なんだ


きはだ:命に感謝……


あさぎ:感謝……?


白ちゃん:食材も命だものね


きはだ:2人は食材に陳謝して


ひいろ:心より、な


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