【SF小噺】学校消滅
独裁者は反乱を恐れ、国民への教育を禁止した。国のことなんて考えられないようにすれば、自分は安泰になるだろうという思惑だ。
そうして次々と学校を潰してゆく。だが各地に何カ所か、私塾として学校をやっている者がいるらしい。
独裁者は学校狩り部隊を結成することにした。メンバーは政府の高官子息から選抜する。
だが若いゆえ、学校とはどんな場所なのか知らぬ者も多い。学校狩りといわれても、実際にどんな場所で、どんなことをすれば良いのか分かっていない。
そこで老軍人の隊長は、部隊員を集めて教えることにした。
並べた机と椅子に、若者たちが座る。隊長は黒板の前に立ち、講義を行う。
学校とはどんな場所なのか。どのように狩るのか。
だが、まだ若者たちは学校とはどのようなものかがピンと来ていないようだ。
「そうだな……」
具体的な物を見せて教えようとした瞬間のことだ。
講義を行っていた場所へ、憲兵たちが押し込んできた。
「学校禁止令違反で全員逮捕する!」
言われれば確かに、我らのやっていることはまるで……。
「なるほど、学校とはこんな場所だったのか」
と納得しながら、そこにいた全員は連れ去られた。
かくしてその国はアホばかりになり、学校より先に国の方が消滅することになってしまった。
……という歴史を、いま私は学校で教えている。
この話を聞いた生徒たちは笑った。
「だから勉強って大事なんだね!」