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瓶の中の白い油は、ガマゲイルというカエルの魔物から採れる油だそうだ。漢字で書くなら脂のほうが正しいだろう。

「これは傷薬になんねん」

「ほう」

傷薬というより軟膏と言った方がよさそうな見た目だが、少なくとも止血効果は見込めそうだった。

「これも持ってた方がいいだろ?」

「確かにな」

「内服薬にもなるんやで。まあ、緑人には使えんのやけど・・・」

「え、そうなのか?」

シチェルも知らなかったらしい。

「なんや知らんけど、めっちゃかゆうなるんやて」

アレルギーという言葉が一般的ではない時代の人間しかこの場にいないのだが、実はそんな理由があるのだった。このことが解明されるのはおそらく何年も後のことである。

「あ」

などと話をしていると、一行の後方から走ってきた男が、シチェルの持つガマゲイル脂を奪い取るとそのまま走り去った。ノンストップの早業に硬直する小松島とシチェル。

「主はん、撃ちなはれ!」

しらねは慣れたもので、何が起きたのかを一瞬で悟ると対応を指示。

「撃てって・・・えぇ?」

「早よう!」

さすがにただのスリ相手に発砲するのをためらっていると、あっという間に男の姿は見えなくなった。

「あかん、今のでうちらがカモやて知られてしもた。ちょう急いで帰らな」

周りを見渡すと、しらねの言う通り確かに柄のよろしくないのが武器を手にひとりふたりとこちらに向かってくる。

「なんちゅう町だ」

小松島は以前と全く同じ言葉を吐いた。

「ほんまにろくな町やあらしまへんで」

「撃っていいな?」

シチェルも三八式歩兵銃を肩から降ろして射撃準備。

「やむを得ん、任意に発砲」

「あいよー。・・・はなてー」

こちらが応戦する用意を始めたとみて一気に距離を詰めてくる小刀持ちの無毛男にシチェルが発砲。直後、ボウガンを構えた別の男に小松島が発砲。ほぼ同時に矢が放たれたが狙いはまるで的外れの方向に逸れた。どちらの射撃も相手を捉えていたようで、男らは血を流してその場に倒れこむ。さすがにカモにするにはリスクが大きいと見たか、他の連中は小松島一行から倒れた2人に狙いを変え、まだ生きているようだが死体漁りを始めた。

「ほな今のうちや」

しらねは自分たちが狙われていない隙に移動を指示。小松島もシチェルもしらねの誘導に従って、ウエストナリィを後にした。


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