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洗濯座というのは、簡単な魔法しか使えない低ランクの魔法使いが小遣い稼ぎに重宝する存在らしい。まずは普通に洗った後、風の魔法(弱)で脱水。火の魔法(弱)で乾燥・・・というわけだ。冒険者として旅することができないような魔法使いが待機しており、「シミ抜きならお任せください」「ほつれ修繕も引き受けます」「サイズ直しサービス付き」などとプラスアルファの特技をアピールして客を取るのである。客の目の前で全工程を一気にこなしてくれるというので小松島もこれを依頼してみた。

「なるほど、早いな」

スピード仕上げが自慢の魔法使いに依頼してみたら超高速で仕上げてくれたのだった。特に脱水の工程は服が宙に舞うほどの風を起こして水を吹き飛ばすという圧巻の光景。この洗濯パフォーマンス見たさに指名してくれる固定客もいるのだそうだ。

「洗濯パフォーマンスというのは初めて見たが、なかなか面白かった」

小松島はそう言って料金を支払い、洗濯座を後にした。なお、畳むところまではやってくれないそうだが戻ったらすぐに着替えるので別にいいだろうと考えた。


が。

「このままウラシマ祭り行こうぜー」

とシチェルが言い出した。

「いや、ウエストナリィの油屋・・・」

「でも主はん、この混雑ぶりでっせ?」

しらねの言う通り、日が暮れかけて祭りが本格的に始まる時間帯。浴衣を着た観光客が通りを埋め尽くし始めていた。洗濯座に行く時と帰る時で混み具合がまるで違っていたことを思い出す。

「混雑なかったとしても、たどり着くころには店ぇ閉まってますえ」

「・・・営業時間聞いてなかったな」

国分寺商店のスタッフと会ったときに場所だけ聞いて別れたことが悔やまれる。なんなら同行すればよかったのだ。

「とにかく何か食べに行こうぜ」

「まあ、それは賛成だ。・・・仕方ないか、ウエストナリィは明日にしよう」

「日没後に行く場所ちゃいますえ、ほんまに」

「じゃあ決まりだな」

「・・・仕方ないか」

小松島も渋々賛同したので、一行はウラシマ祭りに繰り出すことになった。


服装が違う以外はいつもと同じ。つまり、浴衣に合切袋プラス三八式小銃だ。似合わない以前に無粋であるが、万が一にも盗難にあってはならない物ばかりなので致し方なし。

「お、プララネすくいだ。まだこっちのほうではやってんだな」

シチェルが見つけたのは小さな魚を紙でできた網ですくうゲームだった。なお、プララネは5センチもないこの大きさで成体となる魚であり、釣って捕まえるのには向いていない。食用可であるが、数匹まとめて揚げるぐらいしか調理法はなかった。

「まだやってはるゆうのはどういう意味どす?」

「昔はハットカップでもやってたんだけど、養殖業者がいなくなって廃れちまったんだ。お祭りの次の日のおやつに出るのがうちの定番だったんだぜ」

なお、金魚すくいは昭和の日本ではすでに実施されており、小松島も知っていた。だが勿論、持ち帰った金魚を食べることはない。プララネすくいとの最大の違いはそこだといえよう。

「ちょっとやっていこうぜ」

「どこで調理するんだ?それに、最初にやっておかないといけないことがあるだろ」

「やっておくことって何だ?」

「旅人座にジェムザたちの捜索願いを掲示しただろ?医師座にも同じものを出すんだよ。そうしたらどこかの病院に運び込まれてたとしてもわかるだろ」

「あ、なるほど」

「それは確かにやっとかんとあきまへんなあ」

旅人座の掲示板にはすでに、ジェムザや一太郎一行の外見的特徴を記した捜索願を掲示済みだ。知人と少しでも早く再会できればと願っているのは小松島たちだけではなく、捜索願の掲示は他にもいくつかあった。


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