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「そういえば新大坂出身だったな?」

「あ、ちょいちゃいます。新京都生まれの新大坂育ちどす」

各方面の言葉が混じっているのはそのせいもあるらしい。

「新通天閣の右のほう、煙突がたくさん並んどるあたりがナリィ地区で、そのへんどす」

「ナリィという地名はどういう漢字を書くんだ?」

「漢字ちゃいますねん。なんやややこしけどそういうものどす」

しらねの故郷ということでいろいろと思うところがあるようだが、今やらないといけないことはいくつもある。

「ジェムザたちを探すにはどうしたらいいと思う?」

まずは、行方が分からなくなっている仲間の捜索。もちろん一太郎とヒーナ、リトも探さないといけない。

「闇雲に探して見つかるもんじゃねーよな・・・張り紙でもするか?」

「ああ、それだ。座に行方不明者の捜索願を出せば掲示板に張り出してくれるんだった」

「新大坂に皆が来てはるんやったら街路樹たちに聞けばわかるんやけど・・・」

今回はこの手が使えない。そして、旅人の行動に詳しいジェムザもいない。小松島は苦労しそうな予感がしていた。

「あとは本来の目的の油だな」

「国分寺商会の場所ならたぶん聞けばわかるんじゃねーか」

「そうだな、だとするとこっちの課題は少し早く片付くかもしれん・・・先にやっつけるか」

もともと新大坂を目指していた理由は、ここで重油らしきものが売られているという情報があったゆえである。ジェムザたちの安否も気になるが、かといってそちらに専念するわけにもいかなかった。

土手を下るとすぐに新大坂の郊外である。今まで立ち寄った町のように城壁で囲まれてはいなかった。

「すごく活気のあるところだな」

街並みは郊外であるのだが、人や貨物の流れは新横浜に勝るとも劣らないほど大規模に見える。郊外でこれなら中心市街地はいったいどれほどのものであるのか。

「あ、ウラシマ祭て書いてはる」

「そういやマーメイドたちがそんなことがあるとか言ってたな」

「しらねは詳しく知ってるんじゃないのか?」

「さあ・・・うちがおったんは新大坂の西のほうなんで、東の方でやっとる祭りについては詳しゅうありませんのや」

どうやら結構ローカルな祭りらしい。

「うお、隆二!あたいら結構運がいいぞ!」

「どうした?」

シチェルが指さした方を見ると、国分寺商会と書かれた馬車が数台並んで停車していた。

「店がどこにあるのか聞いてみようぜ」

「よし」

荷物を積み込む作業をしている人物に話しかけたが、残念ながら関係者ではなくここで雇われた作業員であった。馬車の持ち主はどこにいるのかと聞くと、近くの食堂で休憩中とのこと。押しかけるのも失礼かと考えて待つこと1時間ほどで待ち人来る。

「お尋ねしますが、国分寺商会の方々でしょうか」

「そうですが」

「新静岡で聞いたのですが、こちら新大坂に油を扱う店舗があるとか?」

「ええ、ございますが・・・それは紹介状か何かで?」

国分寺商会の男は、小松島が手に持つ紙を気にしている。

「ああ、これは新静岡でアリューシャン・ベロウッド氏からいただいた手紙でして」

「商会長から?・・・失礼ですが、どういったご関係でしょうか」

こういう会話の流れになるよう、わざわざ手紙を持ったうえで話しかけたかいがあったというものだ。

アリューシャン氏との出会い方について説明すると、最初は疑われていたものの謝礼金や物品の要求ではないと知ると対応が変わった。

「石油・・・という商材については申し訳ありませんが私は経理の担当ですのでよくわかりません。石の油ということは油を固形化したような商品でしょうか?」

「いえ、ただの液体の油ではあるのですが、化石が変化してできる油です」

「となると詳しい者がおりますので呼びますね」

と別の商会員が替わって話を聞いてくれる。

「地中から採取される油、でしたら例えばアトイ商店の墨油のような?」

「ああ、まさにそれです」

「でしたら油取扱店の中でも在庫がある店舗は限られるのですが、ウエストナリィの支店でしたら取り扱いがございます」

「ウエストナリィですか。わかりました、行ってみます。ありがとうございました」


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