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水から上がった小松島一行は持ち物を整理すると、まずは現在位置の特定を必要としていた。

まずは近くに人里がないかを確認するためにより高い場所に上がろうとしていたが、あいにくと水に上がった場所の対岸がその高台であった。

「こっちのほうは大森林だな」

2つの太陽の位置関係からみて、一行が流されてきた川はおよそ南西から北東方面に流れており、上陸したのは川の北側と思われた。さらにその北方はどこまでも続くように見える大森林で、とても人が住む場所とは思えない。

「あの辺は沼地かもしれないな」

「あそこにやたらとでかい木がある」

などと評価しても仕方ない。川の北側に用がないとすれば南側を偵察するしかないが、今更再入水するのも・・・と多少現実逃避していたのである。

「橋がありそうな場所はないな・・・」

「木を切ってきて丸木舟にするか?」

「さすがに手間がかかりすぎるだろう」

「あ、主はん。ええもん見つけましたえ」

しらねが都合よく係留された小舟を発見。3人ぐらいなら乗れそうだ。

「明らかに誰かの持ち物だろう、これは」

「けどほれなら泳ぎはりますか?」

問われて小松島は悩んだが、一応小舟を調べてみる。

「係留ロープが劣化してるな」

「船の中に草生えてまっせ。・・・ああ、1年ぐらいは誰も乗らんかったようで」

というのはしらねが草に教えてもらったのだろう。

「結論。これは捨てられた舟だ」

「でんな」

「ん。間違いない」

都合よく解釈し、利用させていただくということにした。3人が乗ってもまだ少し余裕がある大きさであり、窮屈感はなかった。

「そういや隆二、肩は大丈夫なのか?」

舟を漕ぐ小松島の動きには全く違和感がない。新京都脱出時に敵の刃が肩をかすめたが、今見ると服に切れ目が入っただけで体には影響があるようには見えなかった。

「かすめただけだったようだな。今はもう痛くもなんともない」

「ならいいんだけどな」

「痛むようならうちの体内で鎮痛剤調合しまひょかと思てたんやけど」

「・・・そんなことまでできるのか」

「それなりに時間かかりますよってに、応急処置には向きませんけど可能どす」

「すげーな」

次々に明かされていくしらねの特技に、もう驚くしかない2人であった。


30分ほどで対岸にたどりつく。

「係留する場所がないから陸に上げておこう」

舟を引き上げ、土手を上る。対岸から見たときはわからなかったが、これは明らかに人工的に盛り土された堤防であった。

「おー・・・大都市だ」

堤防の向こうに広がっているのは、人口密度の高そうな大都市だった。

「まずはここがどこなのかを確認しないといけないな」

流された場所からの距離も方角もわからないので、現在位置が見当もつかないのである。

「・・・主はん。朗報どす」

しらねが呆然とした顔で小松島の袖を引いた。

「朗報?」

「あそこに高い塔が見えますやろ」

しらねの指の先には、鉛筆を立てたような塔があった。高層建造物の少ないこの都市でひときわ高い建物なのは一目でわかった。

「あれは新通天閣といいまして、新大坂の名物ですねん」

「新通天閣・・・。てことは」

「ここ、新大坂です。えらい偶然ちゅうか都合がよろしおますけんど」


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