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しらねはなかなか戻ってこなかったが、2人がうとうとし始めた頃にようやく戻って来た。

「いやー苦労しましたわほんま。岩にがっちり食い込んで抜けへんかったんで」

と言って三八式をシチェルに返してくれた。銃床に大きな傷・・・もはや欠けと言ってよい損傷があるが、すぐ折れたり割れたりするようなことはなさそうだ。ただ残念ながら照門が外れてなくなっている。

「ありがとな」

「いやいや」

「ところでしらね、魚人間を見なかったか?」

「さかなにんげん?」

「マーメイド族だよ」

小松島に馴染みのない名称をシチェルが修正する。

「ああ、見ましたえ。仲間を探しとるとかいう・・・えーと、ビスはんやったかな」

どうやら惜しいところですれ違ったようだ。

「俺たちが流されたときのことを説明できるか」

「えーとどすな、たしかまずシチェルはんが転んだんで腕ぇ掴んだんですが、そのあとはうちが川底で踏ん張るより先に皆はん次々に流されてもーて。とりあえず主はんは掴んだんですが、手ぇは2本しかないもんでジェムザはんとリトはんまではどうしようもなかったんですわ。あとはもう水の勢いが強おて流されるしかなかっんたどす」

「それでここまで来たのか?」

「川底から地底に分岐する流れがありまして、うちらはそっちに吸い込まれてもーたんどす。ジェムザはんたちはそのまま川の流れに沿っていったんで、たぶんオアシスゆうところまで行ったんちゃいますやろか」

「そうだとしたらオアシスまでたどりつけば合流できるな」

「でける思います」

どうやら、やるべきことは決まったようだ。

「よし、そうと決まればとりあえず外に出る道を探そう」

「はいな、ほな案内しますわ」

探すと言ったのにいきなり案内というしらね。

「・・・出方わかるのか?」

「一応下流の方で外に出る道は見つけてあります」

「しらね・・・お前本当に役に立つ仲間だな!」

「全くだ・・・本当に頼りになる」

「あはは、そないなん」

途中までは岩場を歩き、水の中に入る。深さは腰ほどで、流れも緩やかだった。

「うちもついでなんで仲間探してましてん」

「仲間?」

「植物仲間どす。情報欲しかってんけど、気づきましたえ?この洞窟、草も木ぃも何一つ生えてませんよってに」

「・・・言われてみれば見事なまでに緑っけがないな」

「どうも洞窟自体が魔力の塊ゆうか、そんな感じでしてん。ほなけん根ぇ張ろうと思ても全く伸びていきまへん。植物にとってはめがっさ暮らしにくい場所でんな」

「なあしらね、なんか深くなってないか?」

話しながら歩いていたが、水深がいつの間にかシチェルの胸の下あたりまで上がってきていた。

「だんだん深ぁなっていきますねん。んで・・・あ」

しまった、という顔でふたりを振り返るしらね。

「おふたりはそのお・・・水の中を15分ほど歩くことってできましたやろか?」

「できるかい!」

「無理だ!」

「・・・すんまへん!そんことすっかり忘れてましたぁ!」


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