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一定間隔で水が岩を叩く音で小松島は目を覚ました。

「ここは・・・?」

一見するとそこは洞窟の中であった。天井の高さはかろうじて小松島が自立できる程度であるが、横幅はかなりある。また、地下の川とでも言うべき水の流れがあり、それの深さも底が見えない程度はあった。

(いや待て、なんで底が見えないってことがわかったんだ俺)

洞窟でありながら真っ暗ではないことに気付いた小松島は辺りをよく観察するが、不思議なことに光源のようなものはないにもかかわらず視界が確保できる程度には明るかった。

「他の皆は・・・?」

自分以外の姿が見えない。それに、合切袋がなかった。三八式歩兵銃は自分のすぐ横に置かれていたし銃剣もなくしてはいなかったが、手荷物の類が一切ないというのは痛い。ここを動くべきかどうか迷ったが、悩む必要はあまりなかった。水音と共にすぐ横の川からしらねが顔を出したのだ。

「はれ?主はん起きてはる」

「しらねは無事だったか・・・他の皆は?」

「シチェルはんはちょい向こうにおりますえ。あとはちょっとわからんです」

答えながらしらねは水から上がる。その手には小松島の合切袋を持っていた。

「うまいこと水底のでっぱりに引っかかっとりまして助かりましたわ」

「ああ、それはよかった」

合切袋を受け取ったが、蓋が開いた様子はない。おそらく中身も無事だろう。

「あとシチェルはんの銃がありまへんよってに、探してきますわ」

「お前素潜り得意なのか?」

「カズラ族は水の中でも2,3日生きられますけん。まあ、生きられるちゅうだけで、泳ぎが得意なんとはちゃいますけど」

「それは知らなかったが・・・助かる」

「はいな。ほな、もうちょい潜って探してきますわ」

と言うとしらねは再び水中へ。小松島はシチェルがいるという方へ歩き出す。ものの5分ほどで、あぐらをかいて座り込んでいるシチェルの姿が見えた。

「シチェル」

声をかけると、シチェルはすぐに反応し小松島と目が合った。

「よー、隆二も無事だったか」

座ったままで右手を挙げて軽く挨拶してくる。

「いきなり水没したから驚いたぞ」

「おー。何だったんだろうな、あの鉄砲水」

事情を知らない小松島たちからすると、いきなり川が増水して流されたという程度の認識でしかなかった。そして、会話が途切れる。

「・・・ジェムザとリトさん、どこに流されたのかな」

仲間のことを話題にすると暗くなるだろうというのが理由ではあったが、話題にしないわけにもいかなかった。

「しらねはさっき会った」

「あたいも会ったぞ。水中でも平気で動けるなんて知らなかったよ」

「溺れないというだけで、泳げるわけじゃないらしいが。おっと、しらねが戻って来た」

先ほどのように水音を立てて、水面から顔が出てきた。

「・・・違う、しらねじゃねえ!」

小松島は慌てて銃を構えた。


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