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新京都の市街地はどこまで行っても半壊・全壊した建物ばかりであった。途中で数人の人間を見かけたが、どこの所属の傭兵なのかもわからなかった。少なくとも住民ではあるまい。

「所属がわかる目印とかつけてないのか?」

「ないな、皆勝手に自分で装備を整えるからな」

「それでよく同士討ちしないな・・・」

「それは大丈夫だ、戦場以外では出会ってもお互いスルーだからな。さっきすれ違ったやつらもそうだったろ」

うっかり味方を殺してしまわないようにという配慮から始まったこの不文律だが、存外うまく機能しているので誰も文句を言わないらしい。

「だが、敵も味方も関係なく攻撃して持ち物を奪うことが目的のやつもたまにいるからな。互いに攻撃しないっていうのは仲良くしましょうって意味じゃないからそこは注意してくれ。・・・ああ御者、次の大通りで左折な」

「はいな」

右に曲がると自由延箆党水原派の本部、直進すると行き止まりだそうだ。

「一体いくつの勢力が戦ってるんだ?」

「さあな。30か40ぐらいはあるんじゃないか?それらが同盟組んだり裏切ったりしてやりあってるから、毎日のように敵味方が入れ替わる。戦士の引き抜きやトレードも多いし、FA宣言して金次第でどこにでも所属するってやつもいる」

プロ野球か。

そして馬車は予定通り左に曲がり・・・。

「おや?一太郎はん、なんか道が塞がってますわ」

「え?」

馬車は減速し、そして止まった。後ろの幌がめくり上げられ、軽装備の兵士が覗き込んできた。喧嘩腰で誰何してくる。

「この先は人民丸楠派の領土だ。お前ら自由延箆党の方から来たな?」

小松島が答える前に一太郎が名乗った。

「本家丸楠派所属の園田一太郎だ。人民丸楠派とは同盟関係のはずだが」

「ああ、本家さんか。悪いが通行止めだからほかの道を行ってくれ」

「待て、園田一太郎か?」

他の兵が会話に割り込んできた。

「お前民主連合にいなかったか?いつから丸楠派になったんだ」

「先月の話じゃねーか、今更だぞ」

「・・・そうか、もう先月になるのか」

顔見知りらしい兵士がいたようで、一太郎はしばし話し込んだ。話が終わると、馬車はその場で回頭、来た道を戻る。

「この道が使えないとなるとだいぶ遠回りになるな、川沿いに行こう」

これでは護衛というより道案内役であるが、おかげで争いに巻き込まれずに済むならそれで充分ありがたいのである。

「すまんが予定の半分も進めそうにない、今夜は本家丸楠派の拠点で一泊した方がいいと思うが構わないか?」

「ああ、任せる」

一太郎の所属する勢力で休ませてもらえるようだ。馬車は一太郎の案内で物資集積所のような場所にたどり着いた。

「はれ?ここって元祖丸楠派の拠点やなかった?」

しらねが疑問を呈した。

「いつの話だ?」

「えーと、少なくとも半年以上前やな」

「そんな前のことは知らんが、元祖丸楠派ならもっと西の方にいるぞ」

「そかー、実はうち、昔は真正丸楠派にいてん。で、ちょうどここで元祖はんとこに捕まってもーて、戦争奴隷になったんよ」

「そうなのか」

しらねにとってはいい思い出の場所ではなかったようだ・・・と思いきや。

「ほれ、ちょうどあの木の上に隠れとうところを見つかってもーてん。懐いわぁ」

嫌な思い出どころか懐かしんでいた。


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