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「平たく言うとやな、あんさんらは悪ない」

「昼間に盗人を捕まえて衛兵に引き渡したそうですわね?」

「ああ、そうだな」

シチェルの合切袋を盗んだ人物を捕らえて引き渡した件のことだろう。

「顔のケガがひどくて衛兵隊もそのまま受け取ってしもたけど、あとで調べたらこいつがなんと市長の息子」

「おう・・・」

「被害届は受け付けてしまったから勝手に取り消せない、だけど市長の息子を逮捕してしまったとなると次の選挙が大変なことになってしまいますわ」

「選挙?」

「衛兵隊のトップは市長派ですねん」

「で、被害届はすでに衛兵隊の中の反市長派ががっちりキープですわ」

「もみ消したい市長・衛兵隊長と、市長・衛兵隊長をまとめて引きずり下ろしたい反市長派が、被害届を出した誰かはんを相手より先に抑えようと手駒の衛兵を動かしたいうわけや」

これでは町中が大騒ぎであろう。衛兵以外の市長派・反市長派も躍起になって小松島一行を探すはずだ。

「なるほど、だいたいわかった」

「つまり町の半分は味方だけど、敵と見分けがつかないってことか」

「いや、半分ではないと思うわ。正直今の市長は人気ないけんな」

「ですが皆さんの安全を確保したい反市長派と、殺害してでも口を封じたい市長派が争う中に戻るのは危険すぎますわ。選挙は来週ですが、それが過ぎた後でも戻るべきではないと思います。顔を潰された市長派がなりふりかまわず報復してくる可能性が高いですから」

「ん?あたいが顔を潰したのは市長の息子だろ?」

物理的な話をしているのではない。

「・・・その『顔を潰された』のがさらに厄介なのですわ。何せ被害届を受け付けたのは市長派でしたから。一目見て市長の息子だとわかれば皆さんを適当になだめすかして被害届を受理しなかったでしょうけど、誰だかわからないほど顔が変形した盗人ということで受け付けてしまいましたから。その衛兵、市長派からかなりの圧力を受けることは間違いありませんから、その恨みは全て皆さんに向けられることになるでしょう」

なりふり構わない報復に出る、というのはそういうことだろう。

「・・・菊花紋、全く関係なかったな」

「そういえばなかったな」

さっきまでそれが一番危険な可能性だと思っていたのに、微塵も関りがなかったことがはっきりしてしまった。

「で、どうする?もう新横浜には戻れないぞ」

「うう・・・実はいまだに新東京を目指すか新大坂を目指すか悩んでいたんだが、もう新東京は無理か」

「無理だな、新大坂まで行くしかない。危険は大きいが・・・あ、そうか。俺らを護衛に雇ってくれよ」

一太郎がこんな提案をしてきた。

「前衛が足りないって言われてたのも、ジェムザがいるなら解決するだろ?」

「あ、なるほど。それならアリだな」

その問題を指摘したシチェルが賛同する。

「なあイチタロー、そっちの2人とは初対面なんだが、実力は確かなのか?」

「ああ、それは間違いない。頼りになるぜ」

まずは僧侶風の中年男性が名乗る。

「リト・アレクシェ。新大坂出身と見せかけて実はガリアル君主国出身でんねん。モノホンの軍隊指揮経験もありまっせ」

続いて、賢者風の若い女性。

「ヒーナ・プレウス、同じくガリアル出身ですわ。護衛任務となれば私の防御魔法がお役に立つと思います」

続いて、小松島一行も自己紹介を行った。最後にしらねを紹介して、全員がお互いの名前を把握。

「ほな、明日になったら新大坂目指して出発しまっさ」

「よし」

今日はここまで。追手から見つかりにくいこの場所で朝を待つことになった。


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