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嫌な予感的中である。

案の定浴室でひっくり返っていたシチェルをジェムザとしらねが引っ張り出して服を着せ、小松島一行は全速力で馬車を走らせていた。

「なんだってこっちが追われてんだ?!」

「話を聞く暇すらなかったからな!わからん!」

追手の兵たちは徒歩であり、馬車なら容易に振り切れた。だが、新横浜の町中を逃げ回るだけではいずれ発見され追いつめられるだろう。

「急ブレーキしま!」

しらねがそう叫ぶと同時に馬車は急停止。乗っていた3人は見事に転がった。

「・・・どうした!」

いち早く体を起こしたジェムザが御者席のしらねを問い詰める。

「すんません、危うく人身事故どす」

「なんでこんな暗くなってから突っ走ってんだよ!危ないじゃないか!」

轢かれそうになった通行人に怒鳴られたが、まあもっともである。

「すまない、ちょっと急ぎの・・・」

「ん?お前・・・ひょっとして」

「イチタローか!」

「やっぱりジェムザじゃないか!何でまだ新横浜にいるんだ?」

通行人はジェムザの知人だったようだ。小松島もジェムザに続いて顔を出す。

「あ、昼間のおっさん!」

「おうふ・・・ああ、思い出した」

昼間、シチェルが「頼れない」と言い切った冒険者たちの一人、勇者風の青年であった。

「おっさん、ジェムザの知り合いだったのか?」

「ああ、ちょっと案内人として雇っててな」

「急ぎっていうけどどうかしたのか?」

「よくわからん、だがさっさと逃げないと危ないみたいでな」

「・・・新横浜から出るなら手を貸すぜ、ただちょっと寄り道してもらうけどな」

「協力してくれるのか?」

「ジェムザの知り合いだろ、だったらそのぐらいしてやるさ」

「感謝する、頼めるか」

勇者風の青年イチタローはすぐに馬車に乗り込んできた。

「出雲屋っていう宿屋わかるか?そこに寄ってくれ」

「えーと、うちはそれ知らへんのですけど」

「案内する、とりあえず出してくれ」

馬車は再び走り出す。今度は先ほどより若干遅いスピードで。イチタローの道案内で目的の宿屋出雲屋にたどり着く。イチタローはいったん中に入るとすぐに出てきた。

「よし、東の門に向かってくれ」

「東門でっか?」

「そこなら知り合いが門番やってるから頼めば通してくれる。」

「はいな」

今度は安全運転の限界までスピードを上げて新横浜の東門に一直線にたどり着いた。イチタローの言う通り、門番の兵士は知り合いでありイチタローが急用と言えばすぐに通してくれた。

「東門は新京都方面の内戦地帯と近いからな。入るのはめちゃくちゃ審査が厳しいが出るのはわりとあっさりなんだ。こんなところに出ていくのは内戦に参加する傭兵ぐらいしかいないからな」

「イチタローは参加しているのか?」

知り合いだったはずのジェムザもそのことを知らなかったようだ。

「おととい休暇をもらって新横浜来たばかりなんだ。本当はあと3日ぐらいゆっくりできるはずだった」

「そりゃすまなかったな」

「ついでにさっき出雲屋に寄ったとき、仲間に情報収集を頼んでおいた。明日中にはなんで追われてるのかがわかるだろうぜ」

「そこまでしてくれたのか、感謝する」

「うん、感謝してくれ。存分に」


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