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泥棒を見失ったジェムザだが、幸いにして裏通りに飛び込んだところまでは追えていた。

「これか」

地面を調べれば足跡がうっすらと残っている。素人にはまず見つけられないが、冒険者として経験を積んだジェムザであれば足跡回りの地面との変化に気付くことができる。むろん限度はあり、人通りの多いところや舗装路ではまず不可能なのだが。

「ここを左に曲がって・・・」

ゆっくりとではあるが確実に相手を追尾していく。

「また左か?元いた場所に戻りそうだな」


「ここ・・・か?」

小松島はシチェルの体調が悪くなる方角を潰していくと、ひとつの建物がその中心点にあることに気が付いた。


「ここやな・・・」

しらねは植物たちの情報により、泥棒が再度逃げ込んだ建物を突き止めた。

「ほな表に回ってみよか」


「ここか」

ジェムザは足跡のみに頼らず、目撃証言も集めて最終的に泥棒が逃げ込んだ建物を絞り込んだ。

「よし、表に回ろう」


「あ」「あ」「あ」

一度解散した4人が、新横浜町役場の前で合流したのだった。

「しらね、実は」

「わかっとります、シチェルはんの荷物が盗まれたんでっしゃろ?うち、そいつを追ってここまで来てますねん」

「そ、そうか」

植物の話を聞くことができる能力のことを知らない小松島はしらねの理解力の高さに驚いたが、今はそれどころではなかった。

「役場に突入というのはさすがにまずくないか」

「というか何故盗人が役場に逃げ込むんだ?」

「よし、ここは正面から私とリュージが行こう。シチェルとしらねは裏口に回ってくれ」

「がってんや」

小松島は背負っていたシチェルを降ろして立たせた。

「大丈夫か?」

「苦しかったのはあの時だけだな。今は何ともないぜ」

「よし、じゃあ行ってくれ」

大人ふたりが残り、しばしの間をおいて役場に踏み込んだ。


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