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「どうした!」

「うう・・・あ、頭が痛い・・・」

地面に横たわり、頭を抱えたまま動けなくなるシチェル。

「・・・そうか!魔法陣!」

出発前にシチェルが艦長から預かった魔法陣。それは、ウシアフィルカスが契約した船から離れて行動するために必要な物。これを常に身に着けておかないと体に不調をきたし、放置すると死に至る。それを入れた合切袋を奪われ、逃走されたためにペナルティが発動したと思われた。

はひゅー、はひゅーと異常な呼吸をするシチェル。顔色が白く変色しはじめる。酸欠症状だ。深呼吸をしても酸素を体内に取り込めなくなってきたようだ。

「ジェムザ、追ってくれ!」

「シチェルは」

「こっちはなんとかする!行け!」

ジェムザが再び走り出す。小松島はシチェルを抱え上げるとその後を追った。少しでも魔法陣に近づいておかないとシチェルが死んでしまう。

少女とはいえ人ひとりを抱え上げての移動では、走るといっても通常の歩行と大差ない移動速度だ。それでも歩みを止めるわけにはいかない。

「はーっ・・・はー・・・なんか、楽になってきた・・・」

「は?」

「はぁー・・・あー苦しかった」

なぜかシチェルの体調が回復してきている。

「てことは・・・あの泥棒に近づいてる?いや、あっちから近づいてきているってことか?」

犯罪心理学に、逃走時にはなぜか左折を繰り返すというものがある。さっきの泥棒が単純に2回左折すれば、道程はともかく物理的な距離は縮まってくることになる。

「シチェル、今から適当に歩くから、苦しくなってきたら言え」

「おうよ・・・」

ちょっと元気はないが、もう瀕死の状態は脱したようだ。小松島は背負った三八式を手に持ち、シチェルを背負いあげて移動しやすくした。負傷兵を救助するときの運び方だ。

「ちょっと苦しくなってきたかも」

「よし、右に曲がってみよう」

「・・・もっと苦しくなってきた」

「てことはこっちか」

「あー、楽になってきた。・・・どんどん楽になる」

人間ダウジングとしてシチェルを使うことで、泥棒を追うことができそうだ。

「苦しくなってきた」

「よし、じゃあこっちだな」


「待たんかーい!」

しらねは主人の持ち物を持つ不審人物を追っていた。その俊足たるや、100メートルを19秒で走破するという驚くべきものであった。擬音で表現するならボッタンボッタンだろうか。

しらねが傭兵時代にあっさり捕虜になった理由がこれだ。情報収集こそ植物の力を借りて行えるものの、いったん発見されてしまえばまず振り切ることは不可能。

「どっち行った?・・・こっちやな、ありがとう!」

あっさり相手を見失うものの、植物の力を借りて正確に追尾していくしらね。


手荷物追跡サービス(人力)

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