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えーと、ほなうちが知っとるところやけど、そもそもの原因はメイジニッポン皇国の内戦やったんよ。ギシャとかいう一派が別んメイジニッポンを作るとか言うてな、んで戦いが始まってん。そん時ギシャが首都にしたんが新京都、当時はまだマソ国時代の町名オーニンて呼ぶ人も多うてな、そっからオーニンの乱と呼ばれるようになったんよ。

ギシャには案外ようさん味方がおってな、最初はそこそこええとこまで行けたちゅうんは聞いとんやけど、結局押され始めてな。拠点ん新京都捨てたんが、えーと、30年ぐらい前かな?もうちょい前かもしれんけど。

でも不利なはずのギシャたちにはなぜか常に新しい味方が増え続けてん。なんでか言うたらそらな、ギシャたちはこう言うてん。「土地は万人のものである。土地が生んだ利益は平等に配給されるべきである」て。早い話が、みんなで働いて儲けたらみんなで分けましょってことやな。ほなけんギシャの仲間になったら今よりはマシな生活になるー思た人が常に増え続けてん。オーニンの乱で死ぬ人の数と同じ数だけ味方が増えたら、そらいつまでたっても終わらんわ。これが20年ぐらい前の話な。

でももともとのギシャたちの数はどんどん少のうなって、ついにはひとりもおらんくなってん。そうなるとギシャ達の跡を継ぐのは誰やちゅう話になるわな?

もうわかるやろ。わいがギシャの正統な後継者やーて言いよんの同士が揉めとんのが今の新京都あたりの内戦や。新京都を治めるのはわいやーって言よるけど土地は万人のものやなかったんかーい、ずべしっ!

あ、ちなみにうちは真正丸楠派の偵察員やっててん。元祖丸楠派の拠点を偵察中に捕虜になって、そっから戦争奴隷になったんよ。

ああ、せや。そん時見せしめに処刑されかかったんを止めてくれたんが人民丸楠派のマオはんや。元気しとるやろーか?あん人がおらんかったらうちはあそこで死んでもーてんからなぁ。


「どこかで聞いたような話」

小松島の感想第一声はこれだった。

「よく聞く話だな、地名だけ変えたらラクサリクサ建国譚第一章と言われても正直区別がつかない」

ジェムザもまるで昔話のようだという反応。

「ガニスン王の伝記で読んだ気がする。このあと、乱立した集団をまとめ上げて独立国にするんだろ」

シチェルですら似たり寄ったりの反応だった。

「だが、ギシャという連中には心当たりがあるな。ひょっとして、正確には『シャカイシュギシャ』と言うのではないか?」

「おおー、よーご存じで。そのシャア・カイシュ・ギシャや」

「やっぱりあの連中か」

社会主義と共産主義は似通った部分も多いため、厳密に区別する必要があまりない。だがともかく、太平洋戦争中の日本では社会主義者は反社会的団体として厳しく取り締まられる存在であり、小松島もそのぐらいは把握している。メイジニッポン皇国でも似たようなことになっていたようだが、本気で社会主義国家建設を望んだ集団は滅び、現在残っているのは権力闘争に明け暮れる武装集団のみということらしい。

内戦のきっかけは掴めた。すでに思想自体も価値を認められていない模様。だが。

「どのみち強行突破は難しいか・・・」

「陸路で新大坂を目指すのか?」

「可能ならそうしたいが」

「案内人としては勧められない」

「だろうな」

行けるものなら行きたいが、行けなさそうなら新函館に向かうしかないようだ。



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