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「一応聞くけど性別は女であってるよな?」

シチェルがしらねに確認をとる。

「どっちにでもなれるんで、好きな方選んでんか」

「なれるってどういうことだ」

「緑人は3日ぐらいかけて性別転換できるんよ。たぶんトレントの人もできるわ」

「へー・・・ちなみに今はどっちだ?」

「当ててみー?」

正直どうでもいい話を聞きながら、小松島は馬車代金の支払いを行っていた。

「車両本体と、馬と、奴隷の御者・・・魔法陣代はサービスしておきますね」

「ああ、やっぱりここだとこのぐらいの値段に収まるか」

ジェムザは金額に納得しているようだが、小松島は相場を知らないので何とも言えない。ただ、手持ちの現金で十分に買えた。

「魔法陣を見ると戦争奴隷だったみたいだな、しらねは」

「犯罪奴隷は扱いが面倒なのですよ。ですから、当店では扱っておりません」

馬車店店主とジェムザのやり取りが小松島には引っかかる。

「戦争奴隷ってなんだ?」

「戦争中に捕虜になったら、身代金を払って帰るか奴隷として売却してもらうか、そのどちらかでないと自由にはなれないんだ」

奴隷を自由といっていいのかは微妙だが、一応捕虜としての待遇というものを決めた国際法はあるらしい。

「しらねは東方の緑人だからな。内戦に巻き込まれたか参戦してたかのどっちかだろ」

参戦・・・しそうには見えないので巻き込まれの方だろうか。あとで本人に聞いてもいいものだろうか。

「では、これで手続きは終了です。ありがとうございました」

小松島とジェムザが馬車に乗り込み、油を売っている2人を呼ぶ。

「早く乗れー、出発するぞ」

シチェルが後ろから、しらねが前から乗り込んで御者席に座った。

「ほな、行きましょか」

手綱を取り、馬に合図を送ると馬車は動き始めた。例の尾行者はもういないようだ。出来心で尾けてみた、というだけだったようだ。

「新横浜までは歩くと2日ちょっとだが、馬車なら休憩を入れてもあさっての午前中には着くだろうな」

「そのあとは新東京に向かって、新函館行の船を探す、と」

お金に余裕ができたのでいい船を手配できるかもしれない。ちょっとした旅行気分で新静岡の町中を進み、新横浜方面に出られる門にたどり着いた。少し混んでいるようだが、列は順調に進んでいるのでさほど待つことなく順番が来た。

「ん?小松島隆二か?」

通過手続きを担当する兵士が、小松島の名前に反応した。

「そうだが、何か」

「確か手紙が来ていたぞ。取ってくるから待っていろ」

「手紙?」

心当たりがなかったがおとなしく待ち、ほどなくして渡された手紙を見る。

「国分寺商会からだ」

「宛名に間違いはないな?」

「ない。ありがとう」

動き出した馬車の中で封を切り、中身を読み始めた。


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