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「いつでも撃てるな?」

「おうよ」

「リュージも」

「勿論だ」

52万7千円のほとんどは座証登録とはいえ、1万円を超える現金を携帯していることは座にいた冒険者たちに広まっている。町を出るまで、もしくは出てから襲われる可能性は十分にあった。というか、すでに尾行者がいることにジェムザが気付いている。そのため、3人ともすぐにでも戦闘を開始できるように備えていた。

「話は変わるが、新静岡から先は当分船員座がないぞ。大丈夫だな?」

「ああ、特に困ることはないと思う」

「なら馬を借りよう。金ならあるんだ、スピードアップした方がいいんじゃないか?」

「乗ったことないんだが」

「あたいもさ」

「となると御者付きの馬車か。確か比較的安い店がこっちにあったな」

ジェムザは交差点を左に折れる。尾行者たちもついてきている。

「・・・これだけ人通りが多ければ襲ってこないんじゃないか」

「そうは思うが、そんなことを考えられるほど賢いやつは最初から襲うという選択肢を取らん」

「一理あるな」

馬車屋は交差点からすぐ近くにあった。

「ここか?」

「いや、そこは馬車の貸し出ししかやってない。いつまで使うかわからないんだから買った方がいいだろ」

また別の馬車屋が近くにあった。ジェムザはその店も素通り。

「ここも貸し出しだけか?」

「馬車本体の販売専門店なんだ。馬と御者が必要だろ?」

この一帯は馬車屋だらけか。しばらく歩くと馬喰座の看板があった。その隣に馬車店があり、これがジェムザおすすめの店とのこと。

「中古だがその分安い。御者は隣で契約できるし、馬はすぐ手配してくれる。」

「車内で寝られるやつがいい」

確かにシチェルの言う通り、今後の移動を考えるとどこでも休止が可能であるというのはメリットが大きい。

「あまり大きくなくてもいいだろう」

「幌は必須」

あげられた条件を満たす馬車があったので、それを購入。馬は1頭で牽けるとのことで、1頭だけ買う。1時間もしないうちに用意できるとのこと。続いて、馬車店隣の馬喰座に入り、御者を手配してもらおうとしたのだが。

「すまねえ、今ほとんど出ちまってる」

「残ってるのは?」

「残ってるのも予約済みだ。5日待ってくれれば数人戻ってくる」

5日はさすがに待てそうにない。

「なんとかならないか?」

「あー、その・・・ならないこともないが、怒らないか?約束してくれるなら紹介だけはする」

「よくわからんが、背に腹は代えられん。一応会わせてくれ」

「わかった、怒らないでくれよ」

馬喰座の主はそう言って奥に引っ込む。数分して戻って来たときには、灰色の布で頭から足先まで全身を覆い隠した小柄な人物を同伴していた。

「奴隷なんだがね、腕は確かだ。腕は」

「性格に難ありか?」

小松島が訊ねると、答えるかわりにその人物は全身を覆う布を取り払った。

「・・・え?」

それは、全身緑色の肌をした子供だったのだ。


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