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「前方に漂流物!」

朝霜羅針艦橋から、ちょうど真正面に漂流物が複数確認できた。

「回避しますか?」

「取り舵にて回避」

「了解」

朝霜は漂流物の左側をすり抜けようとした。

「ん?・・・漂流物に混じって人影らしきもの確認」

「漂流者か!」

小松島はこれを救助するかどうか迷った。一刻も早く煙のもとにたどり着きたいが、漂流者を見捨てていくべきか否か。

「・・・減速。内火艇下せ」

救助を選択した。朝霜は漂流者を巻き込まないように距離を取る。潜水艦攻撃を警戒し、停船はしない。第2煙突横に設置されたモーターボート、内火艇を下ろして漂流者を引き上げる。この間約10分。

「何だあの恰好は」

小松島ほか作業を見守っていた全員が驚いただろう。漂流者の服装はまるで17世紀か18世紀ごろのフランス国王のようなものだったからだ。髪型も同様に中世フランスのような巻き髪をしている。そしてもう1名が引き上げられたが、こちらも若干地味に見える程度で似たような装いである。どちらかというとフランスよりイギリス人の雰囲気だが、小松島は内火艇ダビッドまで出向いて直接漂流者を確認することにした。

「フランス人・・・と考えるのは短絡的に過ぎるか」

その場にいた水兵に、独り言のように話しかける。

「それはいくら何でも・・・。確かにルイ何世とかルイ何とかだとか、そんな感じの見た目ですけど」


「Tashikani Ruinansee toka Ruinantoka datoka・・・」

海から引き揚げられたルイナントカは疲労で全く動けなかったが、この鉄の船の乗組員が自分の名前を口にしたために一瞬で疲れが吹き飛んだ。どこの国の船かは知らないが、少なくとも兄と自分のことを知っているのだと。

「わ、私のことを知っているのか!いや私のことはいい、兄を助けてくれ!」

ルイナントカはその船員にしがみつき、必死で懇願した。


「Im uon uuy uod?on,aazarub iam upureh!」

「え、あ、あーざらぶ・・・何だって?」

水兵は漂流者が突然自分にしがみついてきたので困惑していた。見たところ自分に害を加えるつもりではなさそうだが、冷静さを失っていることだけは確かだ。

「何語かわかるか?」

「わかりませんが、英語ぽくはないですね」

「じゃあやっぱりフランス語か?」

「Aazarub iam upureh!uziirup!」

「何か頼みごとをされている気がします」

偶然にも、その意図だけは正確に伝わっていた。

「あー・・・、とりあえずなんとか聞き取ってくれ。風呂は無事だったな、医務室も使ってよし。艦はこのまま予定通り進むことにする」

「了解しました」

小松島は羅針艦橋に戻ると、再び朝霜を加速するよう指示を出した。今度はなるべく早く18ノットまで増速する。


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