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一夜が過ぎて、出発の準備を整えた小松島一行は新静岡の旅人座の1階に下りた。

52万7千円の受け取りが可能な時間まで1時間ちょっとあるらしいということで、待合室で待機することになった。

「スキュラミニ7匹討伐で3500円のお支払いとなります」

「アントアラクネ1匹討伐ですね、ファミリーは何匹ですか?」

受付には賞金を受け取りに来た冒険者たちが列を作っていた。壁の掲示板に貼られた依頼書や手配書を剥がして受付に持っていく武装集団がたまに見られるが、こちらは今から魔物などを退治しに出かけるようだ。

「ああやって、依頼のあった魔物を倒して賞金を稼ぐ連中のことを冒険者というんだ」

とジェムザが解説してくれた。

「ジェムザは冒険者じゃないのか?」

と、今まさに小松島が言おうとしたことをシチェルが先に口にした。

「私もちょっと前まではやってたな」

「今は?」

「特定生物対策・・・協議?連盟基金専属派遣職員」

「・・・なんつった?」

「特定危険生物連携推進連盟・・・えーと、特定危険生物推進連携基金いや違うな、特定危険生物連携対策協議連携基金」

「連携が2つあった気がする」

なお、「特定危険生物対策連携推進協議連盟基金専属派遣職員」が正解。

「自分の所属ぐらい言えんのか」

「うるさい。リュージだって皇室海軍と皇国海軍の違いがわかってなかったじゃないか」

変なブーメランが飛んできた。

「まあとにかく、その日暮らしの賞金稼ぎから固定給と老後の安定した生活の保障がある契約労働者にランクアップしたわけだ。やってることは変わらないのにな」

「それになるのは難しいのか?」

「自分で言うのもなんだが相当腕が良くないと無理だな。あそこの冒険者連中もたぶんなりたがってるだろうが、簡単になれるものじゃない」

「尊敬した方がいいのか?」

「尊敬しろ」

シチェルが適当に拍手したところで、受付からお呼びがかかる。

「お待たせいたしました、小松島隆二様」

小松島ひとりが席を立って受付に向かう。

「匪賊討伐の賞金ですね、金額が52万7千円となります」

一瞬で座全体から視線が集まる。滅多に聞かれることのない超高額報酬だ。ここまで額が大きいと、嫉妬や羨望よりも「あいつ何やったんだ」という好奇の視線のほうが多くなるものらしい。

「申し訳ありませんが1万円白金貨が不足しておりますので千円金貨のみでのお支払いとなります」

白金貨不足の原因は、前日に第三新東京港で大量に吐き出されたせいだろうか。

「51万を座証に登録して、残りを現金で」

「かしこまりました」

座証に登録した金額は、どこの座でも引き落とせるのだという。旅人座のみならず、船員座でもよいらしい。


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