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小松島の月給が13円であるから賞金総額52万7千円というのは驚いて当然。ちなみに零式艦上戦闘機の価格が16万円ぐらい。もっともこれは大日本帝国の物価であり、メイジニッポンのものとは異なるのだが、ジェムザですら驚いているので信じられない高額なのは確かなようだ。約1000円でおよそ50人が7日間食べていけるという第三新東京港での取引をもとに計算すると、だいたい一人一食1円の食費(それも海軍で標準的な定食)ということになるから、メイジニッポン円は切りのいい数字で現代日本円の500分の1ぐらいとして計算できる。となると、メイジニッポン52万7千円は現代日本2億6千万を超えるぐらいということに。

「匪賊の討伐費用としては高すぎないか?桁間違えてないか?」

「いえ、確かにそうなっていまして・・・お待ちください」

ジェムザが問うと、受付の女性も何か変だと思ったらしく、調べるためにいったん奥へ入った。数分で分厚い資料の束を持って戻ってくる。

「タルタロ兄弟の場合、討伐依頼がこれだけありまして」

「結構な数だな」

「一番古いもので24年前ですね。一件一件の依頼料は普通ですが、これだけ数があると合計額が積もり積もってすごいことになるみたいです」

「待て、討伐依頼の時効は10年じゃなかったか?」

「それは魔物の場合ですね。人間の場合は20年で、手続きによって10年まで再延長も可能ですから。でも、これだけ高額になるのは滅多にありませんよ」

小松島はシチェルの視線を感じてそちらを見た。呆然という表情をしていた。

「つまり妥当な額だと?」

要約するとそういうことか、と小松島が問うた。

「タルタロ兄弟が50万7800円、剣士オルトキが1万3900円、魔術師セロロが4500円、あとは無名の匪賊が単価200円の4人で800円、合計で52万7千円となります。なるんですが・・・」

「ああ、額が多すぎて払えないんだろ」

「左様でございます、申し訳ありません。深夜営業中は1万円が上限となります」

「よくあることだ」

ジェムザはあっさり納得したがそういうものなら仕方ないと小松島も何も言わなかった。

「では日中に来るがそれでよいか」

「そのように願います」

「わかった。というわけだリュージ、明日出直した方がいい」

「仕方ないみたいだな。宿屋に行くか」

「ああ、それなんだが、事情聴取のあと旅人座に来るとは思ってなくてな。ここからまた移動するよりはこの上の部屋に泊まったほうが楽だろ?」

「泊まれるのか?」

「旅人座だからな、旅人に最低限のサービスができるように用意されてることが多いんだ。それに、大金の引換券持って町中をうろうろするのは嫌だろう?」

もっともだ。

「小松島は3号室、私とシチェルが4号室な」

「え、あたいは隆二と別でいいのか?」

「ん?むしろ一緒でいいのか?」

男女であっさり分けてくれたジェムザだが、シチェルは自分が小松島と同室なのが当然と思っていたらしく、この部屋割りは予想外だったようだ。

「いや、男女別のほうがいいだろう」

「だって朝霜の艦内では同室だったじゃないか」

そういえばそうなのだが、あれは部屋がなかったからだ。


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