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ジェムザの予想どおり、夜明け目前に一行は新静岡に到着した。都市の門はまだ閉ざされていて入れない。門の警備をしている兵士に匪賊の件と負傷者がいることを伝えると、すぐに対応を始めてくれた。

「負傷者のうち、治療魔法か魔法薬が必要な者はいるか?」

差し迫った命の危険がある場合は魔法でなんとかするのが一般的らしいが、全員がそれほどではないため不要と答えた。また、馬車は匪賊のものを乗っ取ったことも正直に話す。でないと後でどちらが匪賊扱いされるかわかったものではない。

兵士が門の中で待機している別の兵士に報告し、1分隊ほどの兵士が匪賊の犯行現場に向かっていった。

「門の通過は可能だが、調査が済むまで町から出ることはできなくなる。それでもよいか?」

「あ、こっちはちょっと困る。なるべく早く新横浜に行きたいんだ」

国分寺商会一行は構わないが、小松島一行は急ぎ旅なので足止めは困る。

「ちょっと待ってろ」

兵士がまた事情を報告しに行った。

「な?いらんことすると困ったことになるんだ」

商人たちに聞こえないようにジェムザが言った。少し待つと、先ほどの兵士が上官らしき人物を連れて戻ってきた。

「新横浜に急ぐ理由次第では対応もできるが、何が目的だ?」

「皇室金庫で金の換金をしないといけない」

「皇室金庫?・・・あんたたちの所属は?」

目的を偽ると余計こじれそうなので、正直に説明したうえで金塊を取り出した。

「詳細は言えないが特務で行動中だ」

「・・・菊花紋!」

やはりこれの威光は抜群のようだ。

「菊花紋ですと?」

アリューシャンが即座に反応していた。

「皇室海軍の方だったのですか!道理でお強いはずだ」

「正式には皇室海軍には所属していない。関係する者というだけだ」

これで身分を偽ったことにはならないはずだ。・・・たぶん。

「というわけで、特別扱いは不要だが配慮を願いたい」

「な、なるほど。わかりました。新静岡を出る際には軍の中央駐屯所に連絡いただければ対応いたします」

小松島への態度が一変した兵士と上官は馬車から離れていった。

「しかし驚きましたな、まだ皇室海軍の方がおられたとは」

アリューシャンの態度も一変した。

「え?まだいたとはどういう意味でしょうか?」

「大政変以降、皇室海軍に所属していた方は公の場に全く姿を見せなくなりましたからな。大政変で全員が死亡したのではと言われていましたが、やはり根も葉もないうわさでしたか」

日本と関係があるのではと思われていたメイジニッポン皇国の建国関係者が公の場に姿を見せなくなった、というのはどういうことだろうか?そうだとすると、今のメイジニッポン皇国にいる日本名の住人は?

「ジェムザ、本当か?」

「そりゃ私だって皇室海軍の知り合いなんかいないけど、普通はいないだろ。別におかしなことじゃないと思うが」

とはいえ、知り合いがいないだけではなく知り合いがいる人すら知らない(ややこしい!)というのは不自然だ。生き残りがいるとしてもごくわずかということだろう。が、小松島は非常に細かい疑問点に気付く。

「皇国海軍と皇室海軍って、もしかして別物なのか?」


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