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パーンと軽い破裂音。と同時に、振り下ろされる瞬間の剣が宙を舞った。ちょうどその剣に命中したようだ。

「上に逸れた」

シチェルはボルトハンドルを引いて排莢、直ちに次弾装填。

「はなてー」

発射。突然に剣を失って辺りを見回す男が偶然にもこちらを向いた瞬間、シチェルの弾丸がその口を貫いた。

「次あいつ」

よどみない動きで再び排莢、再装填。

「・・・はなーてー」

発射。倒れた男に駆け寄ろうとした別の男の左肩付近に命中。

「ジェムザ、行って」

「よしきた」

ジェムザはマントを投げ捨てると藪から飛び出し、距離を詰める。匪賊たちがジェムザに気付いたが、シチェルと小松島はまだ隠れたままだ。おそらく目立ちに目立つジェムザ以外には気づいていまい。

「はなてー」

シチェルの4発目は、自分たちに向かってくるジェムザを指さし何事かを叫ぶ男の右目を射抜いた。これは即死のダメージを与えたようだが、おそらく攻撃命令だったのだろう、残りの匪賊らも剣を抜いてジェムザを迎撃する。

ようやく正気に戻った小松島も三八式を下ろして射撃準備を始める。

「はなてー」

シチェルの5発目。最もジェムザに近い匪賊の胸部に命中。被弾の衝撃でのけぞって倒れた。

「もっとまじめに訓練しときゃよかった」

小松島はぼやきながらも初弾装填、発砲。匪賊のひとりの足元に着弾した。

「これ以上は無理だな」

自分の腕ではジェムザに当たりかねない。そう考えた小松島は2発目を撃つことをあきらめた。そのジェムザはいつの間にか背負った棒の覆いを外している。それは槍ではなく薙刀であった。

「せーのっ!」

匪賊が持つ刀の攻撃範囲より外側から振り上げ、顎から額にかけて切り裂いた。残りは1人・・・いや3人だ。やはり馬車の中にまだ残っていた。振り上げた薙刀を、自分の体ごと舞うように1回転させ、1人の胴を薙ぎ払う。あと2人。

薙刀の柄で相手の攻撃を受け止めると、そのまま突き出して殴る。これは致命傷にはなっていないが時間稼ぎとしては十分だった。もうひとりに薙刀の刃を振り下ろす。が、剣で防がれてしまった。しかし構わず振り抜き、剣を折って顔面に刃を食い込ませる。骨で止まったか浅手だったが、戦闘不能とするには十分だった。その時には先に殴られた匪賊が態勢を立て直していた。人質にしようと思ったか、へたり込んでいる女性らの方に走る匪賊の背をジェムザの薙刀が貫いた。


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