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襲われている人、襲っている人双方の声がかすかに聞こえてくる。聞き取れるほど清明ではないが、声の雰囲気と見た目の挙動からして命乞いをしているようだ。そしてどうやら聞き入れられそうにもないことも伝わってくる。

「なんとかなんねーか?」

「無理だ。いくら私でも戦力外を抱えて1対6は勝ち目がない」

戦力外にはシチェルのほか、命乞いをしている被害者たちも含むのだろう。

「1対3ならどうだ?」

「それぐらいならなんとか・・・って、何やってんだお前」

シチェルは背負っていた三八式歩兵銃を降ろしてコッキングハンドルを引いた。音がしないようにそっと押し込み、ハンドルを下す。そして右目を覆っていた髪をかき上げてクリップで止めた。

「えーと、正しい引き付け、次何だっけ」

バットストックを肩に添え、左手で銃身を持ち上げる。右手でグリップを包み込むように握り・・・。

「おい、何やってんだ」

右手人差し指が曲がる前に小松島が制止する。

「この距離ならいけるって」

「お前撃ったことすらないだろ、やめろ」

「何?その武器使ったことすらないのか?」

「いける」

「何がいけるんだ、いいからやめろ」

「リュージ声がでかい。シチェル、無理だやめろ」

「これ見てくれよ」

ジェムザと向き合い、シチェルは右目を指さす。

「え・・・お前その目ってまさか」

「なんだ?」

小松島もシチェルの顔を覗き込んだ。今まで見たことがなかったシチェルの右目は、同じ金色でも左目とは違った、より明るい金色をしていた。

「視力強化のスキル持ちだったのか、シチェル」

「おうよ」

「何のことだ?」

「まあ見てなって」

「リュージ、これは案外任せてもいけるかもしれん」

「はぁ?」

小松島だけが事情を呑み込めていないが、シチェルは再び三八式を構えなおす。

「あ、思い出した。正しい頬付けだ」

体格に釣り合わないほど長いストックゆえ非常に苦しそうな姿勢ながら、一応正しい構え方はできている。受領の際に主計兵がきちんと指導してくれたようだ。

小松島が匪賊集団の方を向き直ると、今まさに集団のリーダーらしき男が湾曲剣を振りかぶったところだった。

「はなてー」


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