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その後、少しずつ情報が集まってきた。
まず艦の頭脳ともいえる羅針艦橋要員、いわば偉いさんは全員戦死。艦隊司令部も同じく全員戦死。
艦の前方から、まず第一主砲は機材は無事だが戦死者が出ていた。
艦橋前の25mm3連装機銃は大破、給弾手1名を残して全滅。前部マストは信号所から上が消えてなくなり、電探と見張り所を喪失。艦橋上の射撃指揮所と測距儀は跡形もなくなっていた。
第一煙突後方の銃座は支柱ごと吹き飛ばされて生存者なし。ついでに煙突も上半分がなくなっていた。
第一魚雷発射管は対空戦闘中だったため無人で、艦の各所で機銃を操作していた数人が生き残っていた。
その後ろの銃座は無事だったものの死傷者多数。第二魚雷発射管は弾痕多数が見られ、機銃掃射を受けたらしいがこれも対空戦闘中は無人であり操作要員は1人が軽傷を負ったのみで全員生存していた。
問題は第2・第3主砲で、第3主砲は何がどうしてこうなったのかわからないが、なぜか第2主砲の上にひっくり返って載っていた。それによって押しつぶされた第2主砲内には生存者がいるようで、救助作業が続いていた。第3主砲は内部からの応答がなく、後部扉をこじ開ける作業中だがおそらく生存者なし。最後に艦尾は爆雷投下軌条付近が消し飛んでおり艦尾切断かと思われたが、水雷部倉庫が半壊水没したのみで水面下はかろうじて残存していた。もちろん旗竿と軍艦旗は跡形もない。
「生存者は全部で51人か」
朝霜の乗組員は326人であった。これは本来の乗組員に加えて水雷戦隊司令部要員等も含む人数であるが、それが51人になったということは6人に1人しか生存していない計算になる。
「上等兵殿、前方に煙が見えます」
「何?」
小松島が目を凝らすと、水平線の向こうに立ち上る煙がうっすらと見えた。
「本隊が交戦しているのでしょうか?」
「たぶんそうだろうな。よし、あそこに向かって前進する」
朝霜は第21駆逐隊の旗艦でした。なので、朝霜で一番偉い駆逐艦長(杉原中佐)よりも上の立場にある駆逐隊司令(小滝大佐)も乗艦しています。
また、〇〇型駆逐艦という分類ですが、分類法にも諸説あったり時期によって名称が異なったりするため、「一般的な呼称」というものすら不確実です。朝霜は本作では夕雲型16番艦となっていますが、資料によっては秋雲型だったり改陽炎型だったり後期夕雲型だったりします。どれが正しいのかというとぶっちゃけどれもそれなりに根拠があるのでどれでもよかったりして・・・。




