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カード新大統領訪問から半年が経過し、朝霜にはメイジニッポン政府よりゲルリンへの派遣が求められた。なお、機関部はあの日以来絶好調で、故障する気配もない。だがいつかはまた故障や不調をきたすことになるだろう。それまでは世界で唯一の装甲軍艦として活躍するはずだ。

朝霜皇室海軍に所属してから5度目の出航となった朝霜を見送る小松島であったが、今回はその横にシチェルがいた。

長い病床生活で体力が落ち、まだ朝霜商会の階段を上り下りするのがやっとというところではあるが、車いすのようなものを使って運んでもらうことで近場であれば出かけることができるようになっている。が、肺を片方失っているのだからもはや遠出できるような体ではない。おそらく一生をこの新東京で過ごすことになるのだろう。

「今回はフィリノさんも乗ってんだよな?」

「脅威度の高い魔物を排除する任務だからな」

ゲルリン派遣の理由は、もはや人の手に負えないような強大な魔物が暴れ出して手が付けられないからというものだった。聞いた話だとどうも石造りの人形らしいので、朝霜の主砲が命中すれば破壊できるだろう、ということで友好親善のために派遣が求められた。当然ながら内陸で暴れられては手が出せないので、なんとかして海の近く、朝霜の主砲の射程内に連れてきてもらうことになっている。出撃の対価として朝霜からは金属加工の職人らとの交流を要求していた。補修部品の安定的な入手ルートの確保は、今の朝霜の生命線だ。幸いなことに朝霜商会の経営は順調で、駆逐艦朝霜の能力維持のほかに補修部品の発注も可能な程度の利益が出ている。

「おや」

朝霜から発光信号が送られてきた。明らかに見送りの小松島とシチェルに向けたものであろう。

「・・・言われんでもわかっとる」

「なんて言ってきたんだ?」

「言われなくてもわかってるようなことだよ。さて、海風に当たり続けると体に悪いぞ、そろそろ行こう」

「お?おう」

倒れる前のシチェルと小松島の約束、『いっしょにごはん』をこのあと果たすことになっている。しらねが先行して席取りをしてくれると申し出があったのだが、なぜかシチェルがそれを断っていた。

「短くても二人旅だもんな」

シチェルの言葉に同意するかのように、駆逐艦朝霜の汽笛が鳴らされた。


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