表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/206

203

小松島は第一新東京港にいた。

「午前中には入港できると聞いていたんだがな」

「本当に信用できるのか?おやつと同じ名前の機械なんか」

ムセンキと無線機。名前の一致は本当に偶然のようだが、ジェムザはいまいち無線機のことを信用できずにいるようだ。無線通信には確かに偽電や誤報のリスクはあるが、無線機の信頼性とは全く関係がない。ましてやこの世界で電波を発信して意思疎通を図るのは朝霜関係者のみなので、その通信内容については疑う余地はない。

「ベスプチ大統領の船団を護衛してやってくるんだから、時間のずれがないよう配慮しているはずだ」

ベスプチ連合州国では最近、大統領選挙が行われた。セルエレキ大統領が健康上の理由で辞任する意向を発表後、経済発展を主軸にした公約を掲げたカード候補と、カード候補の選挙資金調達の不審点を追求する指針を全面に押し出したニードルス候補がその後任をめぐって選挙戦を実施。だが蓋を開けてみればカード候補のワンサイドゲームとなった。国民生活の向上に関する公約を何一つ掲げずにどうやって勝つつもりだったのか、ニードルス候補の意図がさっぱり読めない。

カード新大統領の最大の支援者がルイナンセー氏で、メイジニッポン皇国の鋼鉄砲艦アサシモ号のことをルイナンセー氏から聞かされた新政権は、ベスプチ連合州国最大の脅威かつ友邦であるメイジニッポン皇国との関係強化を決定。次期大統領の外遊先として恒例だったガリアルを差し置いてまで、メイジニッポン皇国を優先した。メイジニッポン皇国は駆逐艦朝霜を正式に皇室海軍所属艦に認定。カード大統領護衛船団の一員として、皇室海軍艦と共にベスプチへ派遣していた。

「あれじゃないのか?」

「ん?ありゃ・・・確かにあれみたいだな」

てっきり南から来るものと思い込んでいたが、ちょうど反対側に煙が立ち上っている。船団は北側から回り込んできたようだ。

「じゃ、予定通りに出迎えと歓迎の用意だな」

「座に伝えてくる」

ジェムザは今、朝霜専属の通訳として雇われている。航海中は皇国海軍しかベスプチ側と接しないため、乗艦せずにメイジニッポンでの待機となっていた。本人は乗ってみたかったようだが。


港の船員座は国を挙げてのイベントの開始が目前ということで大混雑であったが、それとは少し離れた場所にこの人がいた。

「やっと到着かい。ずいぶん待たされたな」

「ええ、でも予定通りですが」

ロックタートルを撃破した船、軍艦朝霜をフィリノが見る機会は今までなかった。完全に行き違いとなり、連絡がついたのは朝霜がベスプチに向かった後だったのだ。その際に、ロックタートル撃破の指揮を執った船員・・・つまり小松島との対面が叶った。妹に騙されたと一瞬だけフィリノは荒れたが、元々金にも名誉にもさほど興味のない人物であるためにわりとあっさり飲み込んでくれた。

「あちらさんの邪魔をしちゃ悪いから、もうちょっと離れておくか」

ギガントサイクロプスを全弾命中で仕留めた砲を間近で見たいという希望を叶えるために、今回小松島は手を配っていた。製油所建設の協力者として佐多艦長に紹介する、という建前でフィリノを朝霜に体験乗艦させることになったのだ。朝霜側としてもこれほどの協力者に何の礼もなしというのは夢見が悪いので、特別招待という扱いをしてくれることになった。

駆逐艦朝霜は、予定通りに第一新東京港に入港した。続いてカード新大統領、支援者たちも無事に上陸を果たし、護衛任務完遂と相成った。


セル=売、エレキ=電、ニードル=針。

お察しください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ