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「小松島上等兵、ただいま帰艦いたしました」
「金長一等兵以下4名帰艦いたしました」
乗艦した一行は、佐多艦長に帰還報告を行っていた。
「ご苦労だった。早速情報のすり合わせを行いたい、が。人数が増えた件についての説明を」
しらねとルアーブルは、道中で増えた人員である。当然佐多艦長は初対面だ。
「こちらはカズラ族の黒崎しらね氏です。馬車での移動に必要な御者として雇い入れました。で、こちらはルアーブル殿」
しらねは会釈のみだったが、ルアーブルは前に進み出ると自ら佐多艦長に名乗りを上げた。
「軍艦畝傍の艦長代理、ルアーブルじゃ。ウシアフィルカスもやっておるが、他に乗組員がおらんでな。消去法で艦長じゃ」
一応艦長同士、階級はないにせよ同格として対応した方が無難と考えた佐多艦長は自分も名乗り、握手を交わす。
報告会は士官室で行われた。
「そういえば、シチェルはどうした?」
「ええ、ではまずその話からですが。つい先ほど、シチェルは重傷を負って畝傍の医務室に運び込まれました」
「えっ」
小松島とシチェルが別行動していても不思議ではないので何の疑問も持っていなかったしらねが、思わず声を上げた。
「重傷?容体は」
「畝傍の軍医の話では、夜まではもつとのことです」
「本物の重体じゃないか・・・。何があったんだ?」
「そのことなのですが、艦長のほうに心当たりはありませんか?」
「なに?」
小松島はルアーブルをちらりと見る。
「ウシアフィルカスの宿命じゃろうと思うておる。佐多艦長よ、朝霜艦に何ぞ重大な損傷を受けなんだか?」
「宿命・・・ああ、そういえばそういう魔法とかがあったような。しかし、重大な損傷というものに心当たりはありませんね」
ギガントサイクロプスに対しては一方的に攻撃し撃破しているので、佐多艦長には思い当たるものがない。
「やられたっ、と思うた瞬間に全体がピンク色の光を放ち、何事もなかったかのように元通りじゃ。本当になんも思いあたらんか」
「と言うと・・・もしや、あれか?タービンの異常振動が突然収まったと思ったら急に全力発揮が可能になった時、たしかに光ったような」
「たぶんそれ、ですね」
「それのようじゃの」
答え合わせが完了した。佐多艦長は頭に手を当てて天井を見上げた。
「なんてことだ」
「しかし、下艦しておっても発動するのじゃな。言われてみれば当たり前のことかもしれんが、これは大発見ぞ。苦労してウシアフィルカスを船室に押し込む必要がなくなる」
「今まで誰も思いつかなかったんですか」
「どうやって効率よく積み込むか、という議論はようされておったがな。まさか前提条件を崩して、積み込まずともよいなどということは誰も考えんかったわい」
「まあ、それはともかく。それでシチェルは重体ということだな。小松島上等兵、すまんが最期まで看てやってもらいたい」
「了解しました。では、手短に報告させていただきます」




