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朝霜は8発発砲し、8体のギガントサイクロプスを撃破した。

「第一砲塔、よくやった」

全弾命中という偉業を成し遂げた手際を佐多艦長が讃え、戦闘終了が宣言された。

「漂流者、何人かいますね」

「巨人に追われて飛び込んだのかもしれん、可能な限り拾ってやろう。短艇、内火艇、両方降ろし方用意」

朝霜が黄泉の世界に転移した時点ではカッターと内火艇1艘ずつしか搭載していなかったが、第三新東京港で人が担げる大きさの手漕ぎボートを購入し搭載してあった。

「救助終了まで停泊しますか?」

「そうだな。・・・あ、後ろのを忘れるところだった」

全速力で航行する朝霜に引きずられるように曳航されてきたナナナミネーらへの事情説明も行わねばなるまい。朝霜が速度を落とし停止すると、何人かが近寄ってきた。

「艦長、漂流者かと思いましたが違うようです。海で暮らす亜人のようです」

「うん?」

港付近に浮いているのは間違いなく漂流者だが、停泊した朝霜に引き上げてもらう意図はないらしい。

「第三新東京港の秘密ドックに案内するよう、小松島上等兵が手配したらしいです」

「そのドックは遠いのか?」

マーメイド族と言葉を交わしているのは甲板にいる兵である。艦橋にいる艦長と意思疎通を行うには若干のタイムラグが生じた。

「すぐそこ、もう見えているらしいです」

「ふむ、なら先に本艦のみ入港するべきか。内火艇の用意はできているか?」

「できております」

「ではまず曳航索を取り外せ。内火艇は漂流者の救助にかかれ。本艦は魚人らの先導に従って入港するので、ハーピーの滝川にはナナナミネー号へその旨を伝令させろ。またナナナミネー号の船団の入港予定を確認して戻り報告せよ」

手旗信号で長文を伝えるのは間違いが起きやすいので、今回は直接訪問しての連絡を行う。幸い海は穏やかで、小さな内火艇でも自由に動き回れそうだ。

「艦長、魚人より追加報告。ドックまでの回廊の簡易な海図を作成済みであり、後程本艦に届けていただけるそうです」

「小松島上等兵は気が利いているな、それは助かる。出入りのたびに誘導をお願いするわけにもいかんだろうしな。内火艇を降ろし終えたら前進最微速」

朝霜は内火艇と短艇を降ろすと動き始めた。マーメイドらはそれを確認して、朝霜の前方と左右に展開する。

「轢きそうで怖いな、もう少し距離を取って貰いたいが」

「自分は以前乗っていた船で潜水艦を轢いたことがあります」

艦橋見張り員のひとりは民間からの徴用乗組員である。輸送船伊豆丸に乗船していた時に日本海軍のものではない潜水艦を発見し、体当たり攻撃を仕掛けた。なおその潜水艦は確かに日本海軍のものではなかったが、なんと日本陸軍のものであったため完全に同士討ちである。当然めちゃくちゃ怒られた。

また、駆逐艦天霧はアメリカ軍の魚雷艇を轢いたこともある。魚雷艇の艇長はなんと戦後大統領選に出馬し、見事当選している。それがあのジョン・F・ケネディだ。

「2時方向に岩礁」

「取舵」

のろのろ運転であるから舵が効きにくい。早め早めの判断と指示が必要であった。


「あれ?日峰さんじゃないすか」

漂流者を救助しに向かった内火艇は、見知った顔を見つけてしまった。日峰に続いて中田と金長にも気がつく。

「何やってんですか」

「巨人に追い回されてたんだ・・・って、そんなことはあとでいい、朝霜にこれを届けないと」

「何ですかそれ」

「秘密ドック付近の簡単な海図だ、一部浚渫しないと通れない箇所があるから今のままでは入港できんぞ」

「え、それは・・・」

朝霜はまさに今その場所に向かっているところだった。


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