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「うおっ?!」

突然、朝霜全体をピンク色の光が包み込んだ。

「被弾?!」

「まさか!」

しかし、思わず目を閉じた佐多艦長ではあったが、再び目を開けたその時にはすでに謎の光は消え失せていた。そして、さっきまで激しく振動していた船体が、今は全く持って正常な状態に戻っている。

「・・・何が起きた?」

「わかりません」

「機関室!タービンの様子はどうだ!」

振動の原因はわかっているので、直ちに機関室に問い合わせる。

『異常なし、いきなり正常に稼働するようになりました』

突然タービンの異常が消えてなくなった。そんなことがあるはずもないが・・・しかし、今は先にやるべきことがある。

「第一主砲!照準どうか」

今の朝霜の艦橋上には、本来あったはずの測距儀がない。射撃の精度は主砲操作員の経験と勘に頼るしかなかった。

『射撃準備よし』

「交互打方始め」

現在の自衛隊なら珍しくもないが、大砲を1門だけ搭載した軍艦というものは当時はあまりない。そのため、複数の大砲を同時に撃つか交互に撃つかは重要な問題であった。日本海軍では昭和12年から「一斉打方」「交互打方」を規定して区別するようになっている。ちなみに、「交互撃方」と書きたくなるがこれは誤りである。

まずは右の砲が発砲した。


「朝霜、発砲!」

海上を漂う金長たちからも朝霜の発砲炎が見え、少し遅れて射撃音が聞こえた。と同時に何かが頭上を突っ切る風切音。これに釣られて首を振ると、さっきまで港にいたギガントサイクロプスの上半身がちぎれ飛ぶのが見えた。おそらく脇腹あたりに命中したのだろう。

「ほあ?!」

「えっ・・・」

予想だにしなかった異常な光景に、しらねとソトが奇声を上げて驚いた。

「初弾命中か、やるなあ」

「まあ、あの距離ですし」

駆逐艦朝霜にとっては素手で殴り合うような至近距離である。駆逐艦綾波が戦艦2駆逐艦4の大戦力に単独で突撃し距離5千で初弾命中を果たしているので、この朝霜の戦果も見事ではあるが奇跡というほどではないだろう。金長らも讃えはするが驚きはしなかった。

続けて2発目の発射音。今度は街中にいたギガントサイクロプスの頭部がはじけ飛んだ。

「なんちゅう砲撃精度や・・・こない当たるんや見たことないで・・・」

しばらく置いて3発目。これも別個体に命中。朝霜は見える範囲のすべてのギガントサイクロプスを撃破するつもりのようだ。

「って、喜んでる場合じゃなかった!何とかして連絡を取るんだ!」

「どうやってですか?」

方法は4つある。まずは音声伝達、平たく言うと大声で伝言を叫ぶわけだ。だが、数キロ離れた船に聞こえるはずもない。

次に、無線連絡。だがこれも無線機を破棄したために不可能となった。

3つ目は発光信号。光のオンオフでモールス信号を作る方法だ。夜ならともかく昼間にやるなら専用の発光器がいる。

4つ目、手旗信号。両手がフリーでないとできないので、着衣水泳中の金長たちには不可能。唯一樽に入っていて手が空いているしらねがやるしかなかった。

「何と送りますか?」

「あー、『ドックアサイ』でどうだ。シンプルで短い方がよかろう」

ドック浅い、である。理解してくれるとよいが。

「黒崎さん、最初はこうです」

金長一行で唯一、手旗信号を覚えていた日峰がしらねに指導する。

「こうでっか」

右手上げ左手下げ、両手を頭上で交差、右手降ろし左手斜め上。これで「ド」。

両手上げ、右手斜め下左手斜め上。で「ツ」。


「第5目標照準・・・てー」

朝霜、5発目を発射。

「あと何匹だ?」

「視認できるのは3匹・・・あっ、漂流者より手旗信号が送られてきております」

艦橋の見張り員が、金長たちの存在に気付いた。

「救助信号か?」

「それが・・・下手すぎて読み取れません」

朝霜乗組員たちはしらねと面識がなく、それが仲間からの連絡であることにも気づかなかった。

「たぶん救助信号だろう、あとで短艇を降ろして拾いに行こう」


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