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金長たちが待機する港の倉庫に、重油が詰まった樽が運び込まれ始めた。
「これで6つと」
「あと4つ持ってきます」
合計10個、元からあった4つを足しても全然足りない。
「すごい量を集めてますが、何に使うんですか?」
と聞かれても、わかるように説明できるわけもない。
「とにかく大量に必要なんだ」
「限度と言うものがありますやん・・・」
いろいろ疑問を持っているようだが、彼らは運び役に過ぎない。言われたとおりに物を運んでお金をもらう仕事であるから、これ以上の詮索はしてこなかった。
「まだまだあるよな?」
「30樽以上はまだ残ってますね」
との答えを受けて、日峰がつぶやいた。
「小松島上等兵殿は本当に製油所を作ってしまったんでしょうか」
「作っちゃったんだろうなあ・・・」
でなければ、この世界の状況から考えてこれほど迅速に集められるはずもない。何をどうすれば製油所などというものを作れるのか、金長たちにはさっぱり理解できなかった。
「無線機直りましたよ」
またしても故障していた無線機だったが、中田が修理を終えたようだ。
「じゃ、一応朝霜に連絡入れておくか」
重油が集まり始めたことを報告したが、指示は変わらず待機のままだった。
数日掛けて樽は順調に数を増やしていく。100を超えたところで、さすがに適当に並べておいては数の把握もできなくなると考え、規則的に並べ変え始めた。
朝霜はすでに第三新東京港を出港し、ナナナミネー号らと共にこちらに向かっているという。
「到着までにいくつになるかな」
国分寺商店の奮闘により、樽を使いまわさずとも十分な数が揃うようになっていたのだが、元々そのような計画だったことを金長たちは知らない。
「3段積んで、奥から並べると7樽並ぶから、1列で21樽。あれ?7列目に入ってますよ」
「おかしいな、数え間違えてたか?100を超えたところだと思ってたが」
いつの間にか思っていた以上の数になっていたようだ。
「これ以上並べると引火した時にこわいな」
「まあ、それは仕方ないのでは」
仕方ないでは済まないが、他にどうにかする方法もない。火の元に注意して管理しておく以外にできることもなく、3人は交代でソトと共に外出するローテーションを組んでいた。そのソトはというと、本来自分がするべきなのは御者なのに肝心の馬車を持っていかれてしまったために本当にやることがなく、せめてということで買い出しに名乗り出ていた。
「ただいま戻りましたー」
ソトと日峰が帰還。
「ござが見つかりました」
「お、そりゃいいな。やっと地面に直に寝る生活から脱出できる」
「ひとり分しかありませんが」
「おい!」
仕方がないのでこれはソト用にする。
「何か変わったことはあったか?」
「冒険者たちが一斉に新横浜の方に向かってるそうです」
「へぇ」
割のいい仕事があるという噂もあった。日峰もその仕事に誘われたが、さすがに受けるわけにはいかず断った。
「あと、詳しくはわかりませんが高級な資材が大量に出回り始めたと」
「ほう?」
床に寝るよりござを敷いて寝たいし、ござを敷いて寝るより毛皮を敷いて寝たいものだ。ファイアボアの毛皮が大量に出回った結果、ござを買い求める客が減ったのであろう。日峰の次に中田が散歩に出かけ、ござを買い足してきた。
「これで全員分になるな」
樽を受け取り、合間で食事をして、気晴らしに散歩に出かけ、暗くなったら寝る。そんな数日を過ごしていたが、何日目かに状況が急変した。
「ギガントサイクロプスが出たらしいですよ」
「ぎが・・・?」
ソトがそんな噂を聞いてきていた。
「なんだそれ」
「巨人です。ヒトツ目の、でっかいやつ」
「巨人ねえ・・・」
「沢村は惜しかったですよね」
その巨人ではない。
「で、そのギガが出たら何かあるのか?」
「何かって・・・大変ですよ。倒す方法なんてないんですから」




