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ひたすら歩き続ける。こんなところで人と会う可能性はないはずだったのだが、前方から誰かが来るのをマウントポッポが察知した。

「盗賊とは思えねーが、魔物は遺跡内にいないはずだしな」

「間違いなく人間か?」

「それは確かだ。だが、この戦力で勝てない相手が来るとも思えんな」

「全員、一応応戦の用意をしてくれ」

想定外の出来事ではあったが、さすがに冒険者たちである。すぐさま武器を用意して、正面から来る正体不明の何かに備えた。足音からして金属の甲冑装備か。それも、すごく重そうな音なので重装甲。確実に近づきつつある相手を待ち構える。暗がりにそのシルエットが見え始めたが、すごく大きい。巨人と呼んで差し支えないほどの巨体が、遺跡の天井に頭をぶつけそうになりながら歩いてくる。

「嘘だろ、あれサイクロプス・・・」

冒険者のひとりが、そのシルエットから正体を見抜いた。人間より少し大きめの単眼生物で、何よりも力の強さが脅威。ついでに皮膚も硬く、普通の矢や剣ではダメージが入らない。

「魔物じゃねーか、なんで遺跡の中にいるんだ」

「やべえ、この戦力じゃきついぞ」

「いつもの刀置いてきちまった」

少々厳しい戦いになりそうだ・・・と皆が覚悟を決めたが。

「おや?こんなところに人がいるとは」

サイクロプスが人間語を話した。

「なんだ、リュージ殿じゃないか」

「え、フィリノさんでしたか」

シルエットはサイクロプスだったが、それは死体を背負っているだけであった。

「こ、こいつ倒したんですか・・・ソロで・・・?」

冒険者のひとりがおそるおそる尋ねる。

「囮役がいてくれたから楽だったよ」

「まさかそれシチェルでは」

「そうだが?」

「うわぁ」

シチェルが逃げ回っているところを横から突き倒し、起き上がる前に心臓を貫いて倒したのだそうだ。ちなみにサイクロプスの死体はほぼ全身が何かの需要がある部位のため、原形を保っている状態なら高く売れる。

「今シチェルはどうしてます?」

「ちゃんと墨油を作ってるよ。ジェムザが手配したやつらが少しずつ到着してるからな」

どうやらすでに重油精製作業は始まっている様だ。

「私はこれを売っぱらってからまた来るよ。じゃあな」

今回の仕事、フィリノの役目は道案内だけだ。つまりすでに役目を終えていて暇なのだろう。

「・・・あんなのが出る場所で採掘なんて聞いてないぞ」

「いや逆だろう、あんなのを倒せるやつが護衛してくれる場所で採掘できるってことだ」

どちらも正解である。が、皆の反応を見る限りひとつめの意見の方が多そうだ。

「どうする?」

「いや行くけどな」

「さっさと済ませて金貰って帰ろうぜ」

一応、ここで逃げ出すような冒険者はいなかったようだ。


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