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翌朝、小松島は一太郎が集めた地下遺跡行き冒険者たち全員と初めて顔を合わせた。100人ぐらいを集める予定だったのだが、わずか20人を超える程度でしかない。
「ちと物足りんな」
「すみません、もうちょっと粘って集めましょうか?」
「いや、とりあえず集まった人だけで出発しましょう。どうしても足りなさそうなら追加募集ということで」
「わかりました。ではとりあえず出発します。リト、追加で応募してきた人がいたら一応引き留めておいてくれな」
「あいあい」
まだ歩けないリトを残し、松原屋を発つ。
「なんで俺も行くことになってんだよ」
流れと勢いで連れ出された酔いのさめたマウントポッポが不満を漏らす。
「昨日冒険者になりたいって言ってただろ?嫌なら残ってもいいが」
「行くよ・・・」
身に着けていたもの以外はもう何も残っていないので、小松島一行に同行しなければ旅人座で冒険者になり稼ぐことになる。だが、マウントポッポの今の実力では日雇いレベルの収入しか期待できないだろう。それならいっそ成り行き任せにした方が、少なくとも数日の間は生活に困ることはない。
一太郎は昨日のうちに新淀川沿いにある貸船屋を探していた。スタンピードの影響で水辺にある店舗は壊滅しただろうが、洪水を想定して堤防の内側に営業所を残してあるはずと読んでいた。その読みは当たり、無事に今日渡し舟を貸してもらえるよう手配できていたのである。
「2艘借りれたから、3往復かな」
全員が対岸に移動してから遺跡を目指す手はずだ。素人が舟を漕ぐのは意外と難しい。冒険者たちのうち経験者2名が操船担当となった。
「小松島さんって船員だったはずでは」
「この漕ぎ方はやったことがないんだ」
小松島が経験したのは船の両弦にオールがあるカッターであり、後ろに漕ぎ手を置く舟ではない。あとは内火艇、つまりエンジン付きボート。なのでここはおとなしく客側に回る。
少々重量オーバーの冒険者がおり、3往復では済まず1往復追加。
「よし、行くぞ」
一太郎を先頭に、小松島とマウントポッポ。冒険者たちの集団の最後にヒーナがついた。小松島は一度歩いた道だが、足元が整地された道ではないためすいすい進むことができない。むしろ一太郎の足が速すぎるのだが。前回地下遺跡を目指したときは5分で着いたが、あれはこの道を通り慣れているフィリノが歩きやすいポイントを押さえてくれたからだ。
「ちょっと速度を落とした方がいい、後ろがついていけん」
「おっと?あ、そうか」
戦闘目的ではないため重防御の冒険者はいないが、足の速い遅いの個人差は当然ある。それを考慮して歩かないといけないのだが。
「先頭替われ」
マウントポッポが先行すると言い、一太郎を押しのける。
「お前、道知らないだろう」
「指示しろ」
ヒーナの姿が見えた、ということは最後尾まで追いついてきたか。それを確認してマウントポッポが歩き出した。仕方なく一太郎が続き、小松島もその後ろについた。
確かに、なんとなく歩きやすくなった気がする。
「先頭で率いるってのにもコツがあんだよ」
「なるほど」
言うだけのことはあり、時々後ろを確認しても列が乱れることなくヒーナまで確認できる。
地下遺跡入り口は、前回来たときとさほど変わらない様子だった。
「これをひっぺぐのか」
あとで隠し直す気はないのか、マウントポッポはばっさりと入り口を隠す草木を撤去した。
「よし、じゃ行くぞ」
やはりマウントポッポ先頭で遺跡内部へ。初めて入る人の方が多いため、皆がきょろきょろしている。
「こっち一直線」
「よし」
あらかじめ聞いていた通りの道順で採掘ポイントを目指す。




