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小松島は、なぜか貴族風の若者と酒を飲んでいた。
「俺だってな、親父がアホなのはわかってんだよ!わかってんだけどな!息子が言うて止まるような親父ならな、落選する前に対策ぐらいすんだろ!」
「まあ、するかもな」
サイレントイーグルに対抗して共闘したことで、小松島への敵意が和らいだらしく、案外素直に八つ当たりを謝ってきたのだった。だが、停めてあった馬車のところに戻ると、そこには何もなかった。側近らは主の姿を見失ったのに、探すどころかこれ幸いと逃げてしまったらしい。これで本当に一文無しになった若者がさすがにかわいそうになったので、小松島は酒をおごってやったのだが、少々酒癖が悪かったようで。
「そういや名前も聞いてないぞ」
「あー、マウントポッポ二世」
「本名なのかそれ」
「んなわけねーだろ選挙ポスター見てねーのか」
タイミングが合わず、小松島は旧市長の選挙ポスターを見ていない。
「二世が俺で一世が俺。じゃねーや、親父が二世で俺が一世!逆だよ馬鹿!」
だめだこりゃ。
だがもうマウントポッポでいいやと投げやりになった小松島はとりあえず酒を追加。適当に潰して静かにさせる作戦にした。
「あー冒険者にしときゃよかったなー」
「何がだよ」
「進路希望!親父の跡を継いで政治家になろうとか考えなきゃよかった・・・。ブルータスお前もか」
「進路希望調査とか学校でやってるのか?」
「施設の先生だよ・・・。田淵、いや田町だったかな?どっちでもいいか」
施設と聞いて小松島が思いつくのは孤児院とか養護施設のほうであるが、仮にも新横浜市長の息子である。そういう意味ではあるまい。
「冒険者になりたいのか?」
「冒険者じゃなくてもいいや、なんかこう、自分で決めて責任を取る仕事ならなんでもよかった」
「じゃあ自分で仕事を決めて結果に責任を取ればよかったじゃないか」
「・・・その発想はなかったなァ・・・」
徐々に声に力が入らなくなってきた。眠気が勝ち始めたようだ。
「猫いいよなあ猫」
「飼ってたのか?」
「犬派だよ俺は」
「・・・どっち飼ってたんだよ」
「ウーパールーパー・・・」
「何だそれ?生き物か?」
日本でブームになったのは終戦後どころか半世紀ほど先の話である。
「うわ寝やがった。気になる」
気になる話の途中で寝込まれてしまったが、マウントポッポはようやくおとなしくなった。結局2世か1世かわからなかったが、まあどうでもよかろう。
寝込んだマウントポッポを背負い、小松島は飲み屋を出た。そろそろ松原屋に向かわないといけない。再び高級旅館街に戻って、ボロ馬車にマウントポッポを乗せ出発。しらねのようにうまくは操れないが、スピードを出さなければなんとかなりそうだ。夜になって人出も少なくなっており、好都合。
「あったあった」
少々道に迷ったが松原屋に到着。この馬車ともここでお別れだが、さすがに放置するのははばかられた。松原屋の者に相談すると、有料で回送してくれるサービスがあるとのことで、これを利用して返却することにした。
「園田一太郎・・・なんだ、前と同じ部屋か」
泊まっている部屋を確認し、上がらせてもらう。ふすまを開けると、一太郎、リト、ヒーナの3人のほか数人の戦士たちがいた。おそらく一太郎に雇われた冒険者らだろう。
「おや、小松島はん。えろう遅かったやないでっか」
「今日はもう来られないかと思いましたわ」
「すみません、少々面倒な絡みがありまして」
と答えながら小松島は担いでいたマウントポッポを降ろした。
「それは?」
「このひとりも追加で」
小松島は、このマウントポッポも戦力として半強制的に勧誘することにしていた。どの道行く当てもないのだし、嫌だと言われたらその時点で別れればいいという考えである。少々非道かもしれないが、ならば飲み屋に放置するのかという話だ。
「あれ?こいつ、マウントポッポじゃないのか?」
冒険者のひとりが、転がされたマウントポッポを見て正体を看破した。
「ご存じでしたか?」
小松島は反射的にそう返したが、本名だったという事実も驚きである。
「一応賞金首だぜ」
「これあんたが捕まえたのか?賞金目当てならやめとけよ、大した儲けにはならんぜ」
確かに新横浜には賞金首として旧市長関係者の張り紙があったが、旧市長本人以外はしょぼい額だった。
「新横浜に連れて行くよりも、このまま連れて行って働かせたほうが役に立つかなと」
「そうかもしれんな」
「働くかねえ?訓練施設を占拠して不良どもと酒盛りしてたような奴が」
「さっき本当に一文無しになったんで、死にたくなければ働くんじゃないかと思います」
「でもまあ、小松島さんが雇い主ですし、いいと仰るなら頭数には入れておきましょう」
この場のまとめ役になっている一太郎がそう言うので、冒険者たちもそれ以上は何も言わなかった。
「では、無事に合流できたことですし、明日出発しましょう」
この場は解散し、各自自分の部屋に戻って休みを取ることになった。




