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突然見慣れぬ服装をした4人が乗り込んできたのでナナナミネーの船員たちは驚いていたが、その中に昼間のやりとりを覚えていた者がいたらしく混乱はなかった。すでに日没後であるため船上は数か所にかがり火がたかれ、明るいとは言い難いが十分に視界が確保できる程度の光量はあった。連絡係がルイナンセーとルイナントカを呼びに行くが、すぐに2人が通訳を伴って姿を見せた。

「コマツシマ・リュージ殿。ようこそナナナミネーへ。歓迎いたします」

「改めて、私を助けていただいたことについて感謝を申し上げます」

ルイナントカは乾いた服に着替え、体調も整えたらしくすっかり健康的な姿になっていた。それにしてもこの2人は並ぶとよく似ている。ルイナンセーのほうが若干恰幅がよく、ルイナントカのほうが若干灰色の髪が青みがかっているのが明確な識別点だろうか。

「先ほどは名乗り忘れて申し訳ありません、通訳のコスミオ・リスタルと申します」

3人の挨拶に続いて、朝霜側も自己紹介を行った。

「艦長の佐多大尉より、貴船との交流および情報交換を命じられました小松島隆二上等兵です」

「金長周平一等兵であります」

「同じく日峰勝二等兵であります」

挨拶を終えたところで、なぜか妙な沈黙が訪れた。ルイナンセーがその沈黙を破る。

「そちらの女性はどなたでしょう?」

なぜかついさっきナナナミネーから朝霜に乗り移った人物のことを初対面のように扱った。

「先ほど移乗させていただいたウシアフィルカスですが」

「・・・何ですって?」

「ウシアフィルカスですよ」

ルイナンセー、ルイナントカだけでなくその場にいた全員が目を見開いて固まった。

「ウシアフィルカスにわざわざこんな服を着せたのですか?」

「いけませんか」

「いけないことはありませんが・・・そのようにウシアフィルカスを扱う方を初めて見たもので少々驚きまして。さぞ」

「さぞ?」

「いえ、お構いなく。本船に残ったウシアフィルカスにはお気遣い無用でございますので、それだけでございます」

小松島はルイナンセーの歯切れの悪い言葉も気になったが、それ以上に。

「ウシアフィルカスというのはこの子の名前ではないのですか?」

「普通はウシアフィルカスに名前などつけませんよ」

どうやら「ウシアフィルカス」は固有名詞ではなかったらしい。

「あの、ルイナンセー様から申し付かっていたのですが、ニッポン語とベスプチ語の簡単な訳本をご用意しております。ウシアフィルカスの扱いに必要な言葉を優先して抜粋しておりますので、お役にたつかと」

「おお、それはありがたい」

通訳のコスミオが差し出した数枚の紙を受け取る。『進め=オグ』『止まれ=ウッポツス』『座れ=オッティス・ヌアド』というように、漢字とひらがな・カタカナで書かれていた。

「なるほど、これは確かに役に立ちそうです。感謝を」

「いえ、弟と船団を助けていただいた感謝の気持ちを表すのには、本来なら翻訳スクロールを差し上げても足りないほどです。帰国してから改めてお礼をさせていただきます」


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