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「して、今日の用件はなんじゃ」

「まあ・・・そうですね。ひとつは御用伺いです」

お茶会が始まってすぐにルアーブルは用件を聞きたがった。暇を持て余している割にずいぶんと慌ただしい。

「朝霜にはこの秘密ドックのことを知らせてあります。近日中に利用させていただくことになるかもしれません」

「それはよいぞ、好きに使うがよい。吾輩も畝傍の60年後に作られた船にはたいそう興味がある」

「・・・と思っていたのですが、確認させてください。今ここを管理しているのは皇国海軍なのですか?」

「管理しているのはその通り、皇国海軍でありひいてはメイジニッポン皇国じゃな。所有しているのは皇室海軍じゃが、そこの違いは存じておるか?」

「畝傍とその関係者が皇室海軍で、皇室海軍はは皇国に属さない独立組織という理解ですが」

「うむ、おおむね合うておる。じゃが皇国は畝傍ありきで独立を保っておるし、畝傍は皇国の支援なくして存続できん。互いに離れられん関係なのだ」

強力な戦闘艦があってこその平和維持ということだ。まさに明治の日本が目指した方向性である。史実の日本は軍縮条約によって歯止めがかかったが、メイジニッポン皇国は自国ですら再現不能という圧倒的な技術格差によって列強と渡り合えている。

「では、実際にドックを運用するにあたっては皇国海軍の者らに協力を求めることになりますか」

「そうなるのう。話を通しておこうか?」

「はい、是非に」

「では茶を飲んだら手配するとしよう」

「あ、これお土産」

話が一段落したところで、シチェルが雑貨屋で買ったひとりじゃんけん機をテーブルの上に置いた。

「おう・・・」

反応を見ればいまいち受けが悪いのが見て取れる。

「何故か知らぬが、吾輩に初めて土産を持ってくる者は皆これを買ってくるのう」

「え、じゃあもう持ってた?」

「たぶん20個ぐらいはある。ああ、そういえばフィリノもこれをくれた」

「うへえ、丸被りかよ。すまねー」

「ひとりでじゃんけん大会ができるな。4回勝てば優勝の勝ち抜き戦」

「どうせなら32個揃えたらもう一戦増やせますえ」


ルアーブルの紹介で皇国海軍の秘密ドック担当者たちと、朝霜入港について詳細を詰めることができた。しかし、ひとつ問題が残る。

「ドックの深さは足りていますね」

しかし、60年間このドックに船を出し入れしたことがないという。閉鎖と排水機構の動作については間違いがないと請け負ってくれたが、ドック迄の水路については保証できないそうだ。史実における話だが、戦後にタンカー日章丸がイランのアバダン製油所に向かった際、何年も手入れされていない水路を移動したために川底に堆積した泥などによって水深が浅くなっていたために座礁しかけたことがある。それと同じことになりかねないのだ。しかもこちらは60年の放置期間。

「第一新東京港からドックまで約2キロ、安全に通れる保証はないか・・・」

「お時間を頂ければ調査できますが」

とは言うが、数日で手早く片づけられる仕事ではない。第一、ここは秘密ドックなのだ。大規模に調査を行って存在が露見するのは避けたい。

「これについてはまた方法を考えるとして、ドックで行える整備の内容について詳しく聞きたいのですが」

「はい、ご説明いたします」


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