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道案内の報酬について、ジェムザはふと思いついた。

「ロックタートルを撃破した軍艦の話とか、警戒飛行中のサイレントイーグルを撃墜した傭兵の話とか、そういうのに興味はないか?」

「へぇ・・・それはなかなか面白そうな話だ。どっちも一度やってみたい相手だが、ジェムザにはそんな知り合いもいるのか」

「いるんだよ、すごく身近に」

具体的には半径1メートル以内にいるのである。

「ロックタートルを撃破した時にその軍艦の指揮を執っていた人物。上空を旋回していたサイレントイーグルを一撃で叩き落とした人物。この2名に会わせるという条件で、遺跡の案内を頼みたい。それでどうだ」

「まあいいだろ、それで手を打つよ。1か月以内・・・は無茶な条件か。半年以内には頼むぞ」

「わかった」

ジェムザは小松島にドヤ顔をして見せた。実質タダで道案内させてやったぞという顔である。

「急ぐならこのまま出発するか?」

「いや、旅人座に荷物を置いてある。いったん戻って引き払い、それからまたここに来ることにする」

「そういうことなら私も行こう。素材を売却しておきたい」

フィリノは3体目のフォレストウルフ解体に取り掛かった。

「先に行っててくれ」

「待ち合わせはどちらで?」

「ここでいいだろ?」

「では、準備でき次第」

「ああ」

あっさりと話をまとめると、小松島は一同に対して旅人座に戻るよう合図した。

「あたいら橋を渡る必要なかったな」

「でんな・・・」

シチェルとしらねはいったい何のために梅ノ橋を渡ったのだろうか。


旅人座の宿をチェックアウトし、新淀川に戻ったのは夕刻だった。今度は小松島も荷物が多いので綱渡りはできない。全員が乗れる舟を借りることにしたのだが、貸船屋も例のごとくスタンピードによって壊滅している。

「また『借り』ることになりますやろか」

「やめとこう」

「あてがあるなら遠慮なく借りればいいじゃないか」

しらねが言っているのは定点観測隊のボートを無断拝借した件だが、その時その場にいなかったジェムザには話が通じない。とはいえ詳しく説明するわけにもいかないのでスルー推奨。

「泳いで渡るか」

「勘弁してくれ」

「しらね、本当に新淀川はどこまで行っても橋がないのか?」

「そらさすがに上流のほう行けばありますやろけど、うちの知る限りでは相当さかのぼってもなかった思います」

「さて、となるとどうしたものか」

悩んでいると、重そうな足音が近づいてきた。

「おや、ここにいたか」

振り返ると、そこにいたのはフィリノだった。身に着けている荷物は最低限のようだが、頭上に逆さに載せているのは小舟であった。

「今から渡るが乗っていくかい?」

「あ、それは是非とも。助かります」

フィリノは新淀川のほうに堤防を降りると、水面にボートを投げ入れた。大きさはだいたい5メートルといったところか。相当な重さのはずだがよくひとりで運べたものだ。

「詰めれば乗れるかもしれないが、転覆しかねない。無理せず2回に分けて渡ろう」

「同意します」

フィリノが漕いでまず小松島とシチェルを渡す。そのまま引き返して今度はしらねとジェムザを対岸まで運び、ボートを係留した。その頃には完全に日が沈んでいた。

「よし、では行くか」

「こんな暗くなってから森に入るのか・・・」

ぼやくシチェルに、松明の準備をしながらフィリノが答えた。

「一番近くの遺跡入り口までは大した距離じゃない。それに遺跡は地下だ、昼も夜も関係あるまい」


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