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どうやら、小松島隆二上等兵の重油入手任務はまだ終わっていないようだ。次の目的地は新東京にあるという皇室海軍の艦艇を確認し、重油の入手ルートを調べること。たまたま1瓶分の重油を入手したところで所詮サンプルである。持続的に安定供給しないと意味がないのだ。

「ここから新東京へ向かうとすると、どういうルートがある?」

小松島は後ろで話を聞いていたジェムザにたずねた。

「もちろん新横浜を経由せずにだな?」

「まあ、そうなるな」

「となるとちょっと厳しいぞ。海路で大陸を半周するのが安全だが、所要日数は見当もつかない。陸路なら中央山脈の北側の森林を抜けるのが第1候補、山脈そのものを超えていくのが第2候補。前者は魔物の脅威に常に晒され続けて7日間不眠不休の旅。後者は過酷な山道と岩肌を伝って10日ってところだな」

どっちも願い下げである。

「新横浜に不正入国して不正出国する手段を勧めるが、急がないならもう数日待てばいい」

「何故だ?」

「選挙がある」

一太郎がぽんと手を叩いた。ジェムザの考えに思い当たったのだろう。

「新横浜もスタンピードで大混乱だからな。そんな中で選挙をしなきゃならないとなると人手不足も極まれりだ。凶悪な強盗ならともかく、それを捕まえた側を逮捕するための捜査活動に割く余裕はないか」

「というわけだ」

「その選挙はいつ行われる?中止ないし延期される可能性は?」

「中止も延期もないな」

「ないない」

小松島の疑問を、ジェムザと一太郎が即座に否定した。

「今の市長は人気がないからな。選挙に勝つには自分の身内以外の有権者が少なくなる今、選挙を強行するしかない」

「あいつスタンピードで身内と支持者の住む地区だけ守りを固めたんだぜ、露骨すぎるだろ」

「で、身内と支持者以外は新横浜を出て行ったか死んだかのどちらかなんだろ?」

「そういうこと」

・・・だそうである。

「というわけで、俺もジェムザの意見に賛成な。選挙当日に新横浜を突っ切り、一気に新東京へ向かうべきだろ」

「なあ、それはつまり、人が戻ってくる前に選挙終わらせちまおうってことだろ?」

シチェルがまた別に疑問を持ったようだ。

「てことは、選挙までは戻ってきてほしくないわけだから、町の入り口が封鎖されてたりしないのか?」

「たぶん封鎖されるだろう。だから投票権を持つ市民を通さないようにするはずだ」

「とすると、入り口で調べられたらあたいらの正体ばれねーか?」

「・・・あ」

「あ」

どうやらジェムザと一太郎が揃って見事に見落としていた模様。

「あー・・・そうだな、物資に偽装して通過するか?」

「選挙までは物より人を調べるだろうしな」

本当にそれで大丈夫なのだろうか。

「ちょっとリスクが大きい気がするが・・・他に手は?」

「時間をくれ、考える」


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