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ルイナンセーとの対面を終えた小松島は朝霜に帰還した。そして機関室まで足を運ぶ。

「佐多大尉は電源室であります」

機関長を探し出して、未知の帆船の船長が漂流者救助のお礼のため朝霜への乗艦を希望していることを伝えた。

「となるとさすがに上等兵では済むまい、引き受けるが同席しろ」

「はいであります」

再び梯子のところまで戻り、乗艦許可が下りたことを伝えた。ルイナンセーと執事のほかもう1名が乗艦してきた。聞くと、通訳だという。

「第一士官室でお待ちいただきたい。ご案内いたします」

「わかりました」

通訳はルイナンセーよりもはるかに流暢に日本語を扱えるようだ。案内後程なくして佐多大尉が主計兵を伴って士官室に姿を見せた。主計兵はルイナンセー、執事、通訳の順に紅茶を提供し、最後に佐多大尉と小松島の前にも紅茶を置いて退室した。

「お待たせいたしました、艦長が戦死いたしましたため本艦を預かっております機関長の佐多大尉であります」

機関長が艦長代理を名乗ることはまずありえない。階級に関係なく、兵科士官が乗艦していれば機関科士官将校はその指揮下に入ることになっている。だが、駆逐艦涼月では実際に兵科士官以上が全員戦死し機関中尉が艦長代理を務めたこともあり、絶対にありえないわけではない。

「ベスプチrengo州国、オイワryosyuのルイナンセー・ヴェルモットdesu。このたviはすごくtasukaリマシて、カンシャこころよりdeござimasu」

たどたどしいながらもあえて通訳を介さず感謝の言葉を述べるルイナンセー。しかしその後はより正確な意思疎通のために通訳を介して発言したいと希望。佐多大尉はこれを受け入れた。

話し合いの結果、諸々の疑問が次々に解決していった。まず帆船の名前はナナナミネー、ベスプチ連合州国オイワ領州所属艦。目的地はガリアル君主国だが、メイジニッポン皇国へ立ち寄るべく正規の航路を外れていた。巨大亀はロックタートル、巨大鳥はワイバーンと呼ばれる怪物で、船団が襲撃を受けたら規模にもよるがまず助からないこと。それを撃退・撃破した朝霜が非常に強力な軍艦で、全く所属がわからずにいたが掲げられた軍艦旗を見てメイジニッポン皇国の皇室海軍の所属艦であることを知った。本来なら貢物を用意して万全の態勢で敬意を示さねばならないが現在の船団の被害状況では叶うはずもなく、欠礼について容赦願いたいとのこと。

「・・・明治日本?」

佐多大尉は漢字でそう書いて見せてみたが、通訳すら首をかしげていた。漢字は見たことがあるがメイジニッポン皇国の正式な国名がそうだとは知らないらしい。

「では、いくつか質問を。こちらは大日本帝国佐世保港を出港して沖縄に向かうよう命令を受け航海中なのですが、これらの地名に心当たりは?」

3人ともないとのことだった。

「次の国名に心当たりはありますか?アメリカ。イギリス。フランス。ドイツ。イタリア」

いずれも全く聞いたことがないとのこと。

「なるほど、結構です。」

佐多大尉からの質問は終わった。


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